執念のアサマ - アサマシジミ低地型 -

 


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毎年、アサマシジミの撮影が楽しみです。

なにせ、中部地方だけで東北にはいない。発生地が急速に失われている。ブルー御三家(ヒメシジミ・ミヤマシジミ・アサマシジミ)のなかでも、味のある独特の青色。地域変異の多彩さ・・・に魅了されます。

 近年ますます衰退する危機的な状況にあるこのアサマシジミは、そうであるがゆえにまた更に一層の採集者の採集欲を誘い、昨年やや遅ればせながらも長野県では採集禁止条例が施行されましたが、まだ法的規制がない山梨では、有名産地には全国から採集者が押し寄せているそうです。

 私の友人が、山梨の某発生地に出かけてみると、蝶の数より採集者の方が圧倒的に多いという状況をみて、嘆きあきれていました。山梨でも早急に保護策を講じないと、この蝶は存続自体が危ういと思われます。

 採集者は、私と同じ団塊の世代が多いのですが、現代の日本の自然は、私らが自由に何の思慮もなく採集などができた時代とは、まったく変ってしまいました。いまや日本の生物たちの環境変動に対する耐圧性・可塑性は私たちが何の遠慮もなく採集行為ができた4・50年前とは比較にならないほど脆弱なものとなっています。ちょっとした採集圧が、辛うじて維持している地域個体群を壊滅させる引き金になりかねません。昔は、人間の採集行為が種を根絶させることなどあり得ない、環境破壊が最大の要因だといって、自らの楽しみのために生物の生命を奪う行為の倫理性を不問にしていたものですが、いまやそうした言説の根拠は無効になっていると言えるのではないでしょうか。

 

 アサマシジミの中で、幸運なことに、高山性のアサマシジミは毎年撮影の機会に恵まれました。一方、低地性のアサマシジミは何度か撮影できたものの、綺麗な♂が撮影できたのは一度だけ、殆どメスばかりということで、特に衰退著しい低地性のアサマシジミを撮影したいと考えました。

 

 というわけで、今シーズンは長野と山梨に遠征してきました。

 目指した一か所のポイントでは、その場所を知っている友人の話によると、5月中旬に食草の茎が途中から折り採られているのが散見されたそうで、幼虫が採集された可能性が高いと仰っておりました。そのせいでしょうか、一頭のアサマシジミも見ることなくすごすごと帰ってきました。翌週、また別のポイントに出かけ、猫の額のようなところで、気息奄々と発生しているアサマシジミにやっと出会うことができました。

 

 

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現れた最初の♀は、少しスレ気味。

羽化してだいぶ日時が経ったようです。 

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どアップ。前羽裏の5番目の長い黒紋がアサマの証明です。

 

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頭目の♀がいました。

丈の低い藪の中をひそやかに飛ぶので、見つけるのに苦労します。

 

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綺麗な♀。ヒメジョオンで吸蜜を終えて飛び上がるのを待ちました。

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この場所で見つけたたった一頭の♂。

鱗粉は比較的綺麗ですが、残念なことに右前翅が大きく破損していました。

鳥にでも襲われたのでしょうか。

この花で一瞬吸蜜したあと、姿を消してしまいました。

 

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比較的新鮮な♀。

この周囲にはヒメシジミが沢山いて、とても紛らわしいのですが、ヒメよりは一回りサイズが大きいのでそれと分かります。

 

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この蝶は、ヒメジョオンよりは、この小さなハコベの花に特に惹かれて吸蜜していました。

 

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飛び写真の続き。

2回も遠征した甲斐がありました。笑