台湾蝶撮影記1 - 超ド級の珍蝶に遭遇 -

 台湾撮影旅行から帰って、もう一か月近くが経とうとしています。
 帰国後、相変わらず近くの蝶を追っかけてはいるものの、ブログの更新をする気持ちがすっかり萎えておりました。汗:
 この間に、台湾でお世話になった林さんが来仙し、低地性のゼフをはじめとする日本の蝶を精力的に撮影していかれましたが、一か月前、林さんの案内で台湾のゼフィルスを探し回る途中、とんでもない珍種に遭遇し、なんと撮影まですることができました。

 ムシャホシチャバネセセリ
 なんだ、地味なセセリか・・・と思われる向きもあるかもしれませんが
 現存する標本は、現時点で3頭のみ(台湾1、日本2)。
 過去に写真で撮影されたのは林春吉氏による2回だけという、台湾の珍蝶のなかでも、ダントツ一位と思われる超ド級の希少種です。

 台湾には、日本と同種のホシチャバネセセリのほかに、バンダイホシチャバネセセリとムシャホシチャバネセセリの3種類のホシチャがいますが、日本と同様に、台湾でもホシチャ自体が草原環境の喪失により希少な種となっています。
また、ムシャホシチャの珍奇さはいうに及ばず、バンダイホシチャも数が少ない種類で、確実な発生地は台湾に数か所知られているだけだそうです。

次の画像は、「台湾胡蝶図鑑 上」 徐堉峰・著 2013 に掲載されたバンダイとムシャの2種類のホシチャの図版です。

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                       「台湾胡蝶図鑑 上」 徐堉峰・著 2013

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右側のページに、バンダイホシチャバネセセリ♂・♀の表裏の標本写真。
左側のページに、参考として、ムシャホシチャバネセセリ♂の模式標本の写真が掲載されています。
(画像右下 +マークをクリックで拡大)

 通常、こうした図鑑に表示される標本は種の特徴がはっきりとわかるように、新鮮で完全な翅の個体が選ばれる筈ですが、この図鑑の著者は、バンダイホシチャバネセセリの新鮮な標本を入手できなかったため、すこしばかり擦れた個体の写真を掲載せざるを得なかったようです。
 また、ムシャホシチャバネセセリに至っては、この本に掲載された写真は、日本の京都大学に保管されていた模式標本で、新種発表資料作成で交尾器の形態を調べるために、尾部が切り落とされている標本であることがわかります。


 一方、同じ年に出版された
「台湾胡蝶大図鑑 全一巻」 林春吉・蘇錦平・共著 2013 には、バンダイホシチャバネセセリ♂・♀の新鮮個体の標本写真と、ムシャホシチャバネセセリの♂の新鮮個体が掲載されています。

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                   「台湾胡蝶大図鑑」 林春吉・蘇錦平・共著 2013
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 こちらには、ムシャホシチャの標本だけでなく、訪花している生態写真まで表示されています。
ただし、♀の標本写真は、「欠缺標本」としてシルエットで示されています。つまり、著者たちはムシャ♀の採集がついにできなかったと思われます。

 このように、2冊の蝶図鑑は、そのために供されたバンダイとムシャの両種ともに、十分とは言えないなかで作成され、とりわけ徐堉峰氏の図鑑は、極めて参照資料が限定されていたと想像されます。

 その後、「台湾胡蝶大図鑑 全一巻」共著者の一人、林春吉氏は、数多くのバンダイホシチャを撮影し、さらに2回目のムシャホシチャバネの撮影にも成功されました。


 そして今回は、6年ぶりに林氏にとって3度目のムシャホシチャバネセセリの撮影となったのですが、同行していた私もその場のお相伴にあずかることになりました。

 以下、次回につづく