赤上がり、存続の危機?
毎年のお楽しみ、赤上がりのヒメギフの発生地でも羽化が始まりました。
先日、気温は少々低く、青空が厚い雲の隙間から時々覗く、と言った日和ではありましたが、出かけてみました。
この場所は、地形の関係から、ほかの低山地帯より発生時期が少し遅れる傾向があるようですが、この日はおそらく♂ばかりだろうと思って行ってみたら、もうメスも出ていました。
羽化して間もない綺麗な個体が、まだ飛ぶ力も十分でなさそうな弱々しい羽ばたきで飛んだかと思うと、湿った地面に止まりました。レンズを向けて拡大してみると、なんと、吸水をしています。
カラスアゲハ類やモンキアゲハなどはよく吸水するアゲハですが、ヒメギフの吸水は珍しいのではないかと思います。本などを見ると、ヒメギフも吸水すると記述されてはいるものの、これまでブログ主はまだ2回しか見たことがなく、これは3回目の目撃となります。この時の気温は、恐らく10度ぐらいで、肌寒いぐらいでしたが、こんな時でも吸水するのには驚きました。
時期的にも早いし、この吸水個体は当然♂だろうと思っていたのですが、よくよく見るとこれは♀でした。カラスアゲハなどの真正アゲハ類では、吸水行動をするのはすべて♂ですが、ヒメギフチョウは♂も♀も吸水行動をするようです。
未交尾の♀のようです。
盛んにストローを伸ばして吸水していました。
この日現れたただ一頭の♂。
これも羽化間もないようなきれいな個体です。
この日は、お昼ごろになると厚い雲がかかり、蝶はぱったりと活動を停止してしまいました。
その翌日、仙台では季節外れの雪が降りました。
なんと5cmもの積雪です。
一週間前にも降雪があり、その雪の後でもヒメギフは元気に飛んでいたので、今回も大丈夫だろうと安心していたのですが…
昨日一日は融雪をまち、今日の絶好の青空と気温上昇の予想に、満を持して出かけてみると。
気温はぐんぐん上がり、太陽の光もさんさんと降り注いでいるというのに、ヒメギフは一頭の♂が出たきり、さっぱり現れません。
11時ごろを過ぎてもこの♂以外は、一頭も姿を見せず、蝶を撮影に来ていたほかの人たちもあきらめて帰り始めました。
そして、12時近くになって、やっと♀が一頭飛びました。
結局、この日出てきた赤上がりのヒメギフは、♂♀が一頭ずつ、たった2頭だけでした。
ヒメギフチョウが飛ぶには理想的な気象条件だったのに、一体どうしたことでしょうか。
これはどうも、3日前の5cmも積もった雪にやられてしまったとしか考えられません。
このポイントは、他から孤立した極めて小規模な個体群で、もし季節外れの豪雪で多くが死滅したとすれば、この個体群の維持自体が危ういのではないかと不安を感じました。
不幸中の幸い、今日出てきた♀の一頭は、交尾付属物を付けていて、産卵をしていたので、この♀の卵が残されることは確実です。またこのポイントでは、最盛期に入る少し前の降雪だったので、あるいは未羽化の蛹もあるかもしれず、それに望みをつなぎたいと思います。まずは、この♀が生んだ卵から孵った幼虫たちが無事育ってほしいと願わずにはいられませんでした。血が濃くならないためにも、ほかにも何とか生き残りがいて欲しいものです。
昨日のお昼ごろの様子。曇り空の下、だいぶ雪が解けていた。
ただ一頭現れた♀
幸い、交尾済みだった。
カタクリで吸蜜を終え、飛び去ろうとする♂
交尾付属物が覗いている
これは降雪前に写した♀。
この♀が無事生き延びているかどうかはわからない。