稲妻蝶
イナズマチョウ Euthalia irrubescensは、1893年に中国四川省蛾眉山の1♂により、新種記載されたそうです。
その後、台湾からも発見され、本タイプの別亜種として ssp. fulguralisという亜種名が付けられました。
台湾では、標高800m前後の各地の山地から記録されましたが、大陸ではこのタイプ記載された一頭のほかに、森下和彦氏が「中国大陸産イナズマチョウ2番目?の標本」として、中国浙江省松陽で採集された標本の存在を「やどりが」に発表したものがあるだけです。
その後、この2頭以外に中国大陸からイナズマチョウは記録されているのだろうかと気になっていましたが、半年ほど前に、某ネットオークションで大陸産のイナズマチョウが出品されていました。
採集地は、蛾眉山と付記された標本でした。
一見、中国大陸に分布するクロオオムラサキ(青山潤三さんの「中国のチョウ」では、イナズマオオムラサキ)にとても良く似ています。サイズはだいぶ小ぶりですが。
しかし、イナズマチョウは、いわゆるイナズマチョウ属(Euthalia)で、クロオオムラサキはゴマダラチョウに近い日本のオオムラサキと同属のSasakiaに分類されていて、系統的にはだいぶ違う蝶のようです。
私が台湾の蝶図鑑をはじめてみた時、キシタアゲハ、フトオアゲハとともに強く心を惹かれたのが、このイナズマチョウでした。
いつか機会があれば、この精悍な感じのするタテハチョウの実物に会ってみたいものだと思ったものです。
しかし、「白水図鑑」解説によると、
「台湾各地から記録があり・・・(中略)・・・これらの記録から判断するとその分布は北部~中部、やや山地性のものであるが、あまり標高の高いところには棲息しないもののようで、むしろ平地~低山地における採集の記録が多い。いずれの産地にも少なく、飛翔迅速で捕獲は困難という。・・・」
この蝶の生活史を全解明した内田春男氏の著書によると、彼はこの蝶を求めて文献にある記録地をすべて歩き回り、それでも徒労に終わったエピソードを紹介し、この蝶との出会いがいかに難しかったかを書いています。
内田氏の本を読んで、イナズマチョウは並大抵のことで出会えるようなシロモノではないことが大変よく分かりました。
しかし、そもそも昔から少ない蝶として知られていたのが、また更に、特にこの10年ほどの間に激減していて、少ないながらコンスタントに見られた宜蘭県棲蘭苗園のあたりでは、近年全くその記録が途絶えているそうです。
また、かつて記録のあった烏來や、六亀などでも姿を消しているそうで、今でも確実に姿を見ることができるのは、僅かに内田氏がこの蝶の生活史解明を果たした拉拉山南部と中部の埔里周辺、および太魯閣渓谷周辺で、ここでは毎年のように少数が目撃・採集されているそうです。
(マレッパイチモンジの棲息地として有名な谷関~石山渓の区域は、イナズマチョウやシロタテハなどの名産地でもありましたが、1999年の大地震によって、山域全体が崩壊し、大規模な復旧工事にもかかわらず大崩落を止めることが出来ず、現在では復旧工事自体を断念して入山禁止になってしまいました。)
私は、今回の滞在でまさかイナズマチョウと対面できるとは夢想だにしていませんでしたが、埔里郊外で思いがけずその姿を見ることができました。
フウジュヤドリギ
イナズマチョウの食草。台湾にはヤドリギを食草とする蝶が8種類いるそうです。
このヤドリギ自体は台湾全土どこにも普通に生育しているようですが、この蝶が棲息するには、なにか特 殊な条件が必要なのかもしれません。
朝9時ごろから、炎天下、ひたすら待つこと3時間。
お昼の弁当を広げた頃に、物凄い速さで視界を掠める黒い蝶が・・・
地面に降りたところに静かに近寄っていくと、それはまぎれもないイナズマチョウでした。
ビデオにスイッチを入れて、まずは遠景からワンテイク。
ズーミングして近寄っていきます。
最初に訪れたこの♀は、おおよそ一分ほど、吸水してくれました。
フレーム一杯にズーム・アップ!
いかにも飛翔力が強靭そうな胴体と面構えです。
目が仄かに赤いのもこの蝶のユニークなところでしょうか。
約一分ほどの吸水の後、
なんの前触れもなく、突然飛び立って一瞬の間に姿を消してしまいました。
その一連の素早い動きは、まさしく閃きに似た目にも止まらぬ俊敏さです。
小さな池のそばで一日中待機して、3回目撃しましたが、台湾滞在中、この蝶に会えたのは、この日一日限りでした。
図鑑などを見ると、この蝶の発生期は6月~10月となっていますが、実際は、この画像のように4月に春型が出るようです。
2頭目のメスは、最初椰子か棕櫚のような葉に止まった後、地面に降りてきました。
椰子の葉から、地面に降りたところをすかさずワンカット
羽化して間もない、新鮮な♀。
シルクのような光沢が実に美しい蝶です。
吸水を始めて30秒ほど。ズームアップしたところで、ビュン!と消えてしまいました。
その後、台湾からも発見され、本タイプの別亜種として ssp. fulguralisという亜種名が付けられました。
台湾では、標高800m前後の各地の山地から記録されましたが、大陸ではこのタイプ記載された一頭のほかに、森下和彦氏が「中国大陸産イナズマチョウ2番目?の標本」として、中国浙江省松陽で採集された標本の存在を「やどりが」に発表したものがあるだけです。
その後、この2頭以外に中国大陸からイナズマチョウは記録されているのだろうかと気になっていましたが、半年ほど前に、某ネットオークションで大陸産のイナズマチョウが出品されていました。
採集地は、蛾眉山と付記された標本でした。
一見、中国大陸に分布するクロオオムラサキ(青山潤三さんの「中国のチョウ」では、イナズマオオムラサキ)にとても良く似ています。サイズはだいぶ小ぶりですが。
しかし、イナズマチョウは、いわゆるイナズマチョウ属(Euthalia)で、クロオオムラサキはゴマダラチョウに近い日本のオオムラサキと同属のSasakiaに分類されていて、系統的にはだいぶ違う蝶のようです。
私が台湾の蝶図鑑をはじめてみた時、キシタアゲハ、フトオアゲハとともに強く心を惹かれたのが、このイナズマチョウでした。
いつか機会があれば、この精悍な感じのするタテハチョウの実物に会ってみたいものだと思ったものです。
しかし、「白水図鑑」解説によると、
「台湾各地から記録があり・・・(中略)・・・これらの記録から判断するとその分布は北部~中部、やや山地性のものであるが、あまり標高の高いところには棲息しないもののようで、むしろ平地~低山地における採集の記録が多い。いずれの産地にも少なく、飛翔迅速で捕獲は困難という。・・・」
この蝶の生活史を全解明した内田春男氏の著書によると、彼はこの蝶を求めて文献にある記録地をすべて歩き回り、それでも徒労に終わったエピソードを紹介し、この蝶との出会いがいかに難しかったかを書いています。
内田氏の本を読んで、イナズマチョウは並大抵のことで出会えるようなシロモノではないことが大変よく分かりました。
しかし、そもそも昔から少ない蝶として知られていたのが、また更に、特にこの10年ほどの間に激減していて、少ないながらコンスタントに見られた宜蘭県棲蘭苗園のあたりでは、近年全くその記録が途絶えているそうです。
また、かつて記録のあった烏來や、六亀などでも姿を消しているそうで、今でも確実に姿を見ることができるのは、僅かに内田氏がこの蝶の生活史解明を果たした拉拉山南部と中部の埔里周辺、および太魯閣渓谷周辺で、ここでは毎年のように少数が目撃・採集されているそうです。
(マレッパイチモンジの棲息地として有名な谷関~石山渓の区域は、イナズマチョウやシロタテハなどの名産地でもありましたが、1999年の大地震によって、山域全体が崩壊し、大規模な復旧工事にもかかわらず大崩落を止めることが出来ず、現在では復旧工事自体を断念して入山禁止になってしまいました。)
私は、今回の滞在でまさかイナズマチョウと対面できるとは夢想だにしていませんでしたが、埔里郊外で思いがけずその姿を見ることができました。
フウジュヤドリギ
イナズマチョウの食草。台湾にはヤドリギを食草とする蝶が8種類いるそうです。
このヤドリギ自体は台湾全土どこにも普通に生育しているようですが、この蝶が棲息するには、なにか特 殊な条件が必要なのかもしれません。
お昼の弁当を広げた頃に、物凄い速さで視界を掠める黒い蝶が・・・
地面に降りたところに静かに近寄っていくと、それはまぎれもないイナズマチョウでした。
ビデオにスイッチを入れて、まずは遠景からワンテイク。
ズーミングして近寄っていきます。
最初に訪れたこの♀は、おおよそ一分ほど、吸水してくれました。
いかにも飛翔力が強靭そうな胴体と面構えです。
目が仄かに赤いのもこの蝶のユニークなところでしょうか。
約一分ほどの吸水の後、
なんの前触れもなく、突然飛び立って一瞬の間に姿を消してしまいました。
その一連の素早い動きは、まさしく閃きに似た目にも止まらぬ俊敏さです。
小さな池のそばで一日中待機して、3回目撃しましたが、台湾滞在中、この蝶に会えたのは、この日一日限りでした。
図鑑などを見ると、この蝶の発生期は6月~10月となっていますが、実際は、この画像のように4月に春型が出るようです。
2頭目のメスは、最初椰子か棕櫚のような葉に止まった後、地面に降りてきました。
椰子の葉から、地面に降りたところをすかさずワンカット
羽化して間もない、新鮮な♀。
シルクのような光沢が実に美しい蝶です。
吸水を始めて30秒ほど。ズームアップしたところで、ビュン!と消えてしまいました。