長崎市街地の大逆転 - 九州へ4 -

前回からのつづき

 長崎市街地のど真ん中にいた不明のシジミは、翅裏が見えない角度で止まっていて、手前のフェンスが邪魔して脇に視点を変えることもならず、種の判別ができないまま飛んで行ってしまいました。

 あたりにはヤマトシジミがたくさん飛んでいて、カタバミも沢山生えています。
 しかし、黒いシジミ同士が追っかけをするとは不思議でした。

 立ち止まって様子を見ていると、また数頭の黒いシジミが飛び始めました。
 2頭がマンネングサのところで縺れて止まりました。
 フェンスが邪魔して近寄ることが出来ず、とりあえず遠くから一枚!

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2015/09/12 長崎市
やはりクロツバメシジミでした。
「おお、お前はこんなところにいたか!」

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
少し遠すぎで、これ以上拡大できず。
九州らしい、白く綺麗なクロツです。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
フェンスのお蔭で俯角がままならず、手前の草がフレームの下部に。汗;
ピントが目に合う寸前に、このクロツは飛んでしまいました。


 前二日のクロツ探索(島原半島上五島)で敗退したこともあり、意外な場所で、思いもかけずクロツに出会えて、ただ驚きです。
 9回の裏・ツーアウト・ツーストライク・満塁のサヨナラ安打! っていう大逆転劇。 爆;

 こんなところにいることが判っていれば、観光に徹することもできたのに・・・笑
 そこは、狭い道路の住宅地の一角で、道路わきのフェンスの下にある2メートルほどの高さの石垣に、わずかなメノマンネングサが生えていました。
 辺りの住宅街の石垣を見て回りましたが、マンネングサが生えているのはこの一角だけのようです。しかし、恐らく、それほど遠くない他の場所にも食草が生えているのではないでしょうか。

 やっと、念願の九州クロツに会えたものの、残された時間はあと30分。
 時間内に・・と意気込んでも、肝心の蝶の方はなかなか止まらず、やっと止まったのを見るとヤマトシジミの♀だったりで、思うように撮影することが出来ません。


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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
カタバミで吸蜜。
このカタバミには当然ヤマトも来るので、その紛らわしいこと。笑
後翅に、半月模様が弧を描いて並ぶのが、この九州クロツ(朝鮮半島亜種)の特徴。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
翅裏の外縁1列目の黒い紋列が太く、明瞭に出るところもこの亜種の特徴の一つ。
非常にくっきりとした印象です。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
♀が産卵しようとしているところへ、♂が寄ってきた。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
翅を縁取る白い縁毛と、くるりとサークルを描く白紋が可愛らしい。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
中には、こんな風に黒っぽくなる個体もいる。
いわゆるタイトゴメ喰い(海クロツ)に近い個体。
真横から撮れなかったのが悔しい・・。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
胴体をおおう白い羽毛と、翅の縁毛が清潔感があって美しい。
これぞ九州クロツ

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
飛び出すところを待ち構えて連写した。ピントが合ったのがこの一枚のみ。汗;

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
かすれもなく、新鮮で美しい♀。
落ち着いた気品と、すっきりとしたたたずまいが素晴らしい。

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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
このショットも、フォーカス・リングを回して辛うじて目に焦点が来たか・・というところで飛び立たれた。


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クロツバメシジミ 2015/09/12 長崎市
唯一飛翔でピタリと決まった感じの一枚。
この個体は、海クロツの寒冷型に出るガチグロなワイルドさとは正反対の、軽快で明るい紋様。

 ところで、今回、偶然にも遭遇した長崎市内の生息地ですが
 長崎市のクロツは、とくに有名な野母崎半島を筆頭に、ほとんどが車で一時間近く離れた市南部の海岸部、そして、北部西彼杵半島の海岸沿いの一部などが知られています。
 長崎市中心部の市街地では、1980代までは記録があったようですが、その後は遇産的な飛来個体の記録です。
なので、この場所は海岸部から離れた、盲点的な発生地と言えるかもしれません。


 ご参考までに、私が過去に撮影した信州2か所のクロツと九州クロツを比較してみます。

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2011/06/29 上田市 ツメレンゲ喰い 

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2015/07/24 松本市 ツメレンゲ喰い 

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2015/09/12 長崎市 マンネングサ喰い 

 同じ信州でも、中央山地を挟んだ東と西のクロツで微妙に変異がありますが、縁毛と裏の地色に茶褐色系が入るところが共通しています。一方、九州クロツは縁毛と地色は灰白色が強く、オレンジ紋と黒斑も大きくコントラストがはっきりしているようです。
 各地、それぞれの美しさで、やはりクロツの魅力はどこに行っても変わりませんね。

 次回は、九州の他の蝶たちをアップしたいと思います。