黒部の渓谷にて

昨年に続き、ことしもクモマツマキチョウに会いに出かけました。
黒部ダム周辺は昔からクモマツマキチョウの棲息地として有名ですが、わたしは昨年始めて訪れました。
6月初旬に現地に行ったときは、若干シーズンが遅めで♂の姿は稀で、撮影できたのは♀だけでした。
この蝶の♀は後翅の複雑な模様が美しく、それはそれで趣がありますが、やはりクモマツマキチョウの本来の美しさは♂のオレンジ色と地の白い清楚な取り合わせにあるのではないでしょうか。
まだ雪の残る荒々しくも激しく流れ落ちる渓流に沿って、小さい割にはかなり敏捷にオレンジ色を明滅させながら飛翔する姿は、その背景の雄大さと蝶の鮮やかさが素晴らしい対照をなして、一幅の絵を見るような美しさです。
この蝶が日本中の蝶愛好者に愛されるのも無理のないところだと思います。

去年は渓流の対岸を早く飛ぶ♂を遠くから指をくわえて眺めているばかりで悔しい思いをしました。
今年こそは、との思いも強かったのですが、去年と同様手も足もでずに一枚も写真に撮ることが出来なかったら悲しいだろうな、などと出かける前から敗戦モード。笑

しかし、天気は絶好のコンディションでした。
仙台を朝6時に出発。
新幹線で大宮から長野新幹線に乗り換え、長野からバスで黒部入り。
お昼前には針ノ木岳の麓に着きました。
ポイントには何人かの先客が。
皆んな大きなカメラを首に下げて、クモマツマキチョウのお出ましをいまや遅しと待ち構えていました。

去年来た時には、姿の見えなかったスミレが、あちこちに咲いています。
これは吸蜜シーンが見られるかもしれないと、期待が高まりました。
淡い紫色のスミレと、クモマツマキチョウの♂の色の取り合わせは、日本産蝶類の中でも最高に美しい眺めのひとつだと思います。

先客のカメラマンの皆さんとのご挨拶もそこそこに、待つことしばし。
現れました。期待どおりのぴかぴかの♂。
待ち構えていたカメラマン達のシャッターが一斉に切られます。
しかし、あっという間に飛び去ってしまい、
私が初めて会った♂は、たった2枚のショットに小さく収まっただけでした。

イメージ 1
    長野県大町市                    DMC-GX1 F/5 S1/2000 ISO-800 45-175mm
眼前にやってきたクモマツマキチョウの♂
スミレで吸蜜するほんの少しの間にシャッターを押すことができた。

このスミレの群落はほんの10株ほど。
♂が♀を探しながら一定の道を通るかのようにこのスミレの上を通過し、立ち寄っていきます。           その間隔は、1時間ほどの間に数回ぐらい。




イメージ 2
長野県大町市                    DMC-GX1 F/5.6 S1/2000 ISO-800 45-175mm(2枚とも)
         つづいて2頭目が飛来。
これは寄った距離で撮影できました。
スミレにカメラを構えておき、蝶が来た瞬間を狙ってジャスト・ミート!




イメージ 3
長野県大町市                    DMC-GX1 F/5.6 S1/2000 ISO-800 45-175mm


イメージ 5

長野県大町市                    DMC-GX1 F/5.6 S1/2500 ISO-800 45-175mm
クモマツマキチョウの最大の魅力は、高山蝶の外見にふさわしい白い体毛と、前翅のオレンジ色と裏面
の雲状紋との取り合わせの美しさではないでしょうか。
スミレの花に止まった姿は、値千金のダンディなキマリかたです。笑
同じ紋様はツマキチョウにもありますが、険しい風景のなかに飛ぶその姿や、その希少さとあいまって、
サイズといい、オレンジの鮮やかさといい、やはり別格の気品と美しさが感じられます。



イメージ 4
長野県大町市                    DMC-GX1 F/6.3 S1/3200 ISO-800 45-175mm
        イワハタザオに静止する♂
気温の上昇と共に活動を停止し、気温が高かったこの日は午後一時過ぎにはピタリと姿が見えなくなっ
てしまいました。

二日間に都合10回程度、撮影の機会があり、そのうちそれなりに写す事ができた何枚かをアップしてみました。