思い出の大雪山2 - ウスバキチョウ -

 ウスバシロチョウ類では唯一、黄色のパル(Parnassius)であるばかりではなく、朝鮮半島、アムール、中国北部、アラスカ、カムチャッカなどの別亜種に比べて、大雪山の亜種(P.eversmanni daisetsuzana)が最も黄色みが強く黒条が明確、しかも赤紋が大きく鮮やかで美しいと言われます。
 以前は、裏大雪の音更岳、石狩岳のほか、十勝岳にも棲息していましたが、今では表大雪以外の山域では見る影さえないほど衰退してしまったとか。
 表大雪でも、温暖化の影響からか、近年、黒岳などはコマクサの群落が壊滅状態となっていて、衰退が激しいようです。
 北海道の高山地帯という厳しい環境にもかかわらず、この蝶の羽化は想像以上に早く、6月中旬が最盛期と言われています。北海道の特産種の多くが7月以降に発生のピークを持つので、他の蝶との掛け持ち撮影が少々難しいのが困ったところです。

ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
1週間続いた悪天候が回復。
肌寒い気温の中で、午前10時ごろになって、やっと蝶が動き始めた。

ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
この蝶のねぐらはハイマツのヤブの中。
ガスが掛かって気温が下がるとすぐにハイマツの中に入り込む。
このときは、日光浴のため翅を開いて体温を温めている様子でした。

ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
とても新鮮な個体。
この黄色の鮮やかさは2・3日だけの、はかないものらしい。
羽化後、数日が経過すると、黄色の鱗粉ははげ落ちて、半透明の油紙のような翅になります。
冷たい雨や水気を弾くための、高山への適応なのでしょうか。

     ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
     翅がやや半透明になりかけの♂。
     ガンコウランとウラシマツツジの上を、花を求めて飛び始めた。

ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
♂に比べ、紅い斑紋が明瞭な♀も現れた。

ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
別の♀。紅い斑紋が大きく、とりわけ美しい。
各種の花を訪れるが、特にクリーム色のイワウメの花を好むようです。


ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
エゾイソツツジの群落で食事中。
花から花へと飛び移っていく。

ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
羽化したばかりの未交尾の♀らしい。
キバナシャクナゲの花に全身を潜り込ませて吸蜜していた。

ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
交尾嚢を付けた♀。ヒースの下に咲くコケモモに口吻を延ばす。

     ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
     これも交尾済みの♀。ウスバシロチョウと同じような交尾嚢が見えている。

ウスバキチョウ♀ 2017/06/28 大雪山赤岳
礫石の上に産卵する。

ウスバキチョウ♂ 2017/06/28 大雪山赤岳
ハイマツで♀が現れるのを監視中。
いつでも追撃できる態勢で前方をにらんでいた。笑

 今回は、例年の2倍も多いという残雪の中、早めに出かけたおかげで、羽化間もないウスバキチョウを撮影できました。
 また来年もウスバキに会いに行きたい気持ちです。笑