夏の顔ぶれ - オオヒカゲ・オオミスジ・ルリシジミ夏型 -

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6月中頃から、連日梅雨空が続いています。

天候不順のせいで、楽しみなゼフィルスの撮影が思うようになりません。この数年、最普通種の一つウラナミアカシジミや、ジョウザンミドリシジミの姿をさっぱり見かけないのも気になります。

そんな中で、夏の季節の顔ぶれが次々と出てきました。

萱の茂る湿地の草原では、オオヒカゲが身を潜めるようにしてあちこちに止まっていました。

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驚くと敏感に反応し、なかなか近くに寄らせてくれません。

多くの場合、近くの樹の幹に身を寄せてしばらく隠れるようにしています。

 

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このチョウは、棲家の葦の藪よりは、こうした木の幹を背景にした方がフォトジェニックに感じられます。

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民家周辺に植えられたスモモや梅の木立の周りで、ゆっくり滑空するオオミスジ

暑い午前中にはよく地上に降りて吸水することが多いのですが、今年は樹上の姿を遠くから望見するだけです。(;^_^A

 

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ルリシジミの夏型♀。

ハギなどのマメ科各種の花芽に産卵しますが、今の時期に花を付けるイタドリに産卵する姿をよく見ます。

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産卵の合間に、イタドリの葉上で休憩する。

 

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夏型♂。

あまりに普通なので、普段あまりカメラを向けることもないのですが、改めて見てみると、はっとするほど瑠璃色が美しい蝶です。

 

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ブログ主のゴム長に来たのをパチリ。

 

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夏型♂の真っ白い裏面。春型に比べ大型なので、逆光で飛ぶときはゼフィルかと勘違いしてしまいます。

今日から7月 - 7月のカレンダー -

 

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 前半は猛暑、中盤から後半にかけては曇天続きの6月でした。

 ゼフィルスの最盛期にもかかわらず、あまりめぼしい写真が撮れないまま、オオヒカゲやオオミスジも出て来て、蝶の季節もピークを迎え、これからは夏の顔ぶれに代わっていきます。

 

哀しみのアサマシジミ

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 本州中部のアサマシジミ
 Aポイントは、昨年に続き、まったく姿が見えず。

 食草はそれなりに生えているのですが、姿を消してしまった原因はわかりません。友人の話によると、昨年5月にあちこちに食草の上部が刃物で切り取られたような跡があり、幼虫が丸ごと採集されてしまったのかもしれないと言っていました。


 昨年♂♀を複数撮影したBのポイントでは、現地に着くと、草むらに無数の踏み跡が見えました。どうも土・日に人が入った様子です。ヒメシジミは沢山いますが、肝心のアサマの姿が見えません。探し始めてから一時間ほどして、やっと一頭の♀を見つけました。何度か現れた♀を撮影しましたが、撮影画像を点検してみるとすべて同一個体のようです。

 この日は、朝7時半ごろから午後3時まで目を皿のようにして他のアサマ個体を探しましたが、確認できたのは結局この♀1頭だけでした。

 

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 このポイントは、文字通り猫のヒタイのような狭い場所で、わずかな食草が生えているだけの、アサマが世代をつないでいくにはまさにギリギリのキャパしかないような環境です。草地の数10mほどの範囲を見て歩くだけで、ポイント全体をチェックできてしまえるようなごく狭い発生地で、この数年、複数の撮影者がブロックしてなんとかこの地のアサマを守って来たそうですが、地元の人間でない以上、四六時中監視の目が届くわけではありません。その間隙を縫って採集者がわずかに命脈をつないでいる個体を目につく限り採ってしまえば、この個体群が絶えてしまうのは当然の成り行きです。

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 ただでさえ激しく減少しているアサマシジミの希少な地域個体群が、たった数人の採集によってあっけなく消滅してしまいます。
 アサマシジミは、長野では県条例で採集禁止。山梨は禁止条例はないが、絶滅危惧種に認定しています。
 最近出た「武器を持たないチョウの戦い方」(京都大学出版会)の著者、竹内剛氏も書いていますが、人間社会の法律があるなし以前に、そもそも絶滅危惧とされている生物種を採集する行為は、自然に対する犯罪以外の何物でもないと思います。

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辛くも採集者の眼から逃れたただ一頭の♀が、無心にウツギの花で吸蜜する姿を見ながら、これがこの場所の最後の個体かもしれないと思うと、このチョウの行く末が不憫に思われてなりませんでした。

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雌も続々 - ヒメシジミ-

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今月は、真夏を思わせる暑い日が続いています。

草原のヒメシジミは、♀も出てきて、あちこちで交尾する姿が見られました。 

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これは新ポイントのカップ

 

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交尾の最中に割り込んでくる♂がつぎつぎに。

時には、数頭の♂が交尾カップルの間に割り込もうとします。

 

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羽化したばかりのピカピカの♀。

羽化後初めての食事らしく、タンポポで長時間吸蜜をしていました。

 

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時たま飛び上がっては、また同じタンポポの花に戻ってきます。

 

 

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ハナアブもやって来た。

  

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一方、こちらでは食草のヨモギに産卵している♀。

ヨモギは草原のいたるところに生えているのに、ヒメシジミが産卵するヨモギはごく一部の狭い範囲に限られます。一体なぜ?

ブログ主は、幼虫時代に共存するアリの棲息環境と関係アリと考えています・・が、それはアリ? w

 

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 この発生地の個体群には、翅裏の亜外縁に並ぶ赤い紋列が発達する美しい赤帯型がかなりの割合で出ます。

 昨年までは♂しか確認できませんでしたが、今年は♀でも赤帯型の個体を見つけました。(クリックで拡大 ↑)

 

♂はこんな感じ ↓

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赤帯型♂

 

ちなみに、下の通常型の♂♀と比べると、アカオビの特徴が良くわかります。

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初夏の青 - ヒメシジミ -

 

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ことしは全般に蝶の発生が早めですが、ヒメシジミも5月下旬には出てきました。

 ブログ主が仙台でこの蝶を追いかけるようになって、5月に発生したのは初めてです。蝶によって、遅い早いがあるようで、うちのベランダからチェックするアカシジミは例年とほぼ同じでした。

 この蝶が出れば、仙台も初夏です。

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この♂を撮影したのは、昨年とは違うポイントですが、ここの個体群は紫色のダークな色彩のものが多いように思われます。
写真右下に写りこんでいる2個の卵は、恐らくキアゲハの卵です。

(ヒメシジミがいる場所は、多くの場合ヨモギに交じってヤブジラミが混生していますが、図鑑などによると、キアゲハはこのヤブジラミも食べるようです。ヤブジラミはせり科ですが、か細い植物なので、キアゲハのような大きな蝶の食草になるとは意外です。)

 

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↑↓ これは驚きの♂。

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この2枚の写真を、撮影地を伏せて見せれば、恐らく多くの人はアサマシジミと断定するのではないでしょうか。

東北でアサマシジミが見つかったとなれば、日本の蝶界は大騒ぎになることでしょうが(笑)残念ながら、これは数多くあるヒメシジミの個体変異の一つと考えられます。

この場所では、ほかにもこれと同じようなアサマもどきを見かけました。

 

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ちなみに、これは典型的なヒメシジミ♂の裏面。

 

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羽化して翅を伸ばしている♂に、やはりちょっと先に羽化したばかりの美しい♂が求愛していた。 クリックで拡大



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食べ終わった空の弁当箱に関心を示す♂。

何回か戻って来ては、弁当箱の上を飛びました。

黒い弁当箱に横たわった白い箸に反応しているものと思います。笑

待ちピンでパシャ!!

 

 

 

 

 

しんがりのアゲハ - モンキアゲハ -

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仙台近郊ではすっかり定着して、この10年ほどの間に、クロ・カラス・オナガと同じぐらいの普通種と言っていい程の数が見られるようになりました。

発生の順番は、黒系アゲハのなかでは一番しんがりで、この蝶が出てきたらそろそろ初夏の蝶たちがでてくるシーズンです。

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車横付けの発生地。
この山域は、カラスザンショウが豊富に生えていて、モンキはこれを食べています。

 

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堂々たる体躯。
ナガサキアゲハがまだ姿を現さないこのフィールドでは、蝶の王者、といった風格を感じます。

 

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斜めの光で、翅裏の翅脈がくっきり。

胴体の白線と翅脈のパターンが見事に一体化しています。

 

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マアザミの野原で悠々と飛ぶ

 

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モンキ♂に、クロアゲハが求愛しにやって来た。

 

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黒衣の賓客 - クロアゲハ -

f:id:OTTOmustache:20210606192155j:plain林間の明るく開けた空をバックに。

 

 

 

 仙台近郊では、カラスアゲハ・オナガアゲハ・モンキアゲハと並ぶ黒系アゲハの最普通種ですが、その黒いビロードの光沢や縞絣を思わせる黒と鼠色のパターンの美しさは、まさに大人の美と言えます。

 晩夏の彼岸花のような赤・朱色系の花とのツーショットは、チョウと花の組み合わせの中でも際立って美しいものの一つではないでしょうか。

 いつもは、カラスアゲハや、ミヤマカラスアゲハの華麗ともいえる美しい蝶を追いかけるあまり、ちょっと地味な感じがするクロアゲハをきちんと写す機会がないのですが、今シーズンはこの上品な黒衣の賓客を丁寧に写してみました。 

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春の朱色の花とくれば、ヤマツツジ
クロアゲハとの組み合わせはやはり絵になります。

 

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♀の春型は、後翅の肛角紋が発達してとても華やかです。

 

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この♀は、赤紋はあまり出ていませんが、粉砂糖のような白い鱗粉が発達した見栄えのする個体でした。

 

 

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真っ黒な♂。まさしく黒衣ゆえの気品が感じられます。

 

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♂にも、しばしばこんな粉砂糖を散らした美しいものを見かけます。 

 

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♂が♀に求愛。

でもこの♀は交尾済みと見えて、♂を避けるため高く舞い上がっていきます。

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  ♂があきらめて求愛行動をやめるまで、この♂と♀はもつれるようになって羽ばたき続けていました。