キシタアゲハ(台湾亜種)

台湾にいるキシタアゲハは2種。

台湾に出かけるようになって、コウトウキシタは蘭嶼島に行かないと出会えないとして、せめて台湾本土にいるキシタアゲハが飛び回る姿を何とか見てみたいものと思っていました。
なにせ、キシタはトリバネの仲間。
蝶が好きだというなら、生きたトリバネを見ずに死ぬわけにはいかないぞ!ってな感じでしょうか。笑

図鑑などによると、台湾全土に分布とされていて、台北、新竹、嘉義周辺などでは秋季に稀に姿を見かけることがあるそうです。確実に姿を見ることができる主な棲息地は台湾東部・南部~恒春半島といわれます。
しかし、1987年に出版された浜野栄次さんの図鑑解説によると、この当時にすでにして恒春半島ではキシタアゲハの発生地がどんどん失われつつあると書かれています。

一番簡単にその実物を拝めるのは、台北市立動物園です。
この動物園の中に「昆虫生態館」のようなものがあって、そこでキシタアゲハを飼育しているのです。
でも、こんな養殖キシタを見ても、なるほどこれがキシタアゲハか、てなもんで、ぜんぜん感動というものは湧いてきません。笑
やはり、野生で生きているキシタアゲハが見たい!!

ってわけで、キシタの影を追って、私は花蓮から南下し、知本でやっとキシタアゲハの雄姿(まさにこの言葉がぴったり!)を見ることが出来ました。
知本のホテルを出て、村落から30分ほど歩いたところにある自然保護区には、植栽された繁星花が沢山あって、オオベニモンアゲハがその赤い花に口吻を伸ばして、夢中になって吸蜜しています。

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        オオベニモンアゲハの♀
       近くにウマノスズクサがある証拠。ということは・・・キシタも必ずいるはず・・・
       キシタはここの花に必ず来ると確信してじっくりと腰を落ち着けて待つことにしました。


待つこと10分ほど。
現れました!
物凄いスピードで背後の高い木の梢を越えて、キシタアゲハの雄が花をめがけて急降下して来ました。
まさに逞しいと言うか、ダイナミックなその姿に、レンズを向けながら、おお、わしゃ、ついに生きたトリバネを見ているんだ、と感動してしまいました。

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        周囲の原生林からどこからともなく飛来するキシタアゲハの♂
       物凄いスピードで広場を横切っていきます。


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       花に急降下して、朝のお食事。
      一瞬たりとも止まることなく、小刻みに羽ばたきを繰り返しながら、吸密を始めました。


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       ビデオ撮影動画から静止画に落とすと、殆ど翅の動きがブレています。
       そのなかで、僅かに静止に近い一瞬の数コマをキャプチャーできました。

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   東南アジアではヘレナキシタについで広く分布するキシタアゲハですが、
   台湾国内では、日本のジャコウアゲハ同様、平地のウマノスズクサ類の生育地が急激に少なくなって
      いるそうで、年々発生地が消滅している種類の一つだといわれています。

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        キシタアゲハの名の通り、下翅の黄色が目の覚めるような鮮やかさ。
       自然界の中では、上翅の黒と下翅の黄色とが見事な対照を見せて、くっきりと際立ちます。

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       吸密を終えて、近くの高い木の梢にテリトリーを張る♂


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        キシタアゲハ♀
       ♂より一回り大きめで、吸密する動作もゆっくりと堂々としたものです。


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面白いのは、キシタの♀に次々といろいろなアゲハのオスが惹きつけられる事です。
この画像は、カラスアゲハの♂がキシタの♀にしつこくまとわり付いているところ。



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こちらはシロオビアゲハの♂(有尾型)がキシタ♀を追尾中。
外見的には同種♀とはだいぶ違うと思われますが、何故か惹かれるようです。


このお花畑には、キシタアゲハのほか、ナガサキ、シロオビ、モンキ、タイワンモンキ、カラス、タイワンジャコウ、ジャコウ、ベニモン、オオベニモンなどの各種アゲハ類が次から次へとやってきては、花の蜜を吸っていました。
アオスジアゲハの類が少ないのはちょっと意外でしたが。

その後、恒春半島の墾丁に移動し、かつて台湾ではキシタアゲハの最大棲息地と言われた場所を歩いてみましたが、内田さんがその著書で書いているような場所とは様変わりしてしまい、ときおりキシタが高い樹のこずえを猛スピードで飛んでいくのを見かける程度で、とても撮影ができるような環境ではなくなっていました。