アキリデス 3種

場所によっては普通種だけど、何度見ても美しくて、つい見とれてしまう蝶、というのがいるものです。
私にとっては、それはミヤマカラスアゲハとカラスアゲハです。
いわゆるAchillidesと呼ばれたりするグループ。

日本のカラスアゲハは、ヤエヤマカラスとオキナワカラスが分離して別種とされたのと並行して、Papilio dihaaniiとして、大陸のP.bianorとは別種とみなされるようになりました。
いまのところ、和名はどちらもカラスアゲハですので、今後は区別するために、P.bianorをカラスアゲハ、P.dihaaniiをニホンカラスアゲハなどとしたほうがわかり易い気がしますね。
一方では、大陸のクジャクアゲハ(Papilio polyctol)の各地の多様な亜種は、すべてP.bianorに包含されるべきだという説が有力になっているそうです。

台湾には、Achillidesの仲間は
カラスアゲハ(P.bianor 台湾本島亜種)
タイワンカラスアゲハ
ホッポアゲハ
ルリオビアゲハ(P.bianor 蘭嶼島亜種)
ルリモンアゲハ
オオルリモンアゲハの6種が棲息しています。

このなかで、明らかに日本のカラスアゲハとは違う系統のアキリデスが、ルリモンアゲハとオオルリモンアゲハです。
ルリモンとオオルリモンアゲハについては、先のブログに書きましたので、残りの4種の写真を・・
といいたいところですが、ルリオビアゲハは、蘭嶼島に出かけてみたものの、ちょうど発生の端境期だったと見えて、3日の滞在期間中にその姿を見たのはたった1回だけでした。
それもちらりと見ただけで、直ぐに遠方へと飛び去ってしまい、撮影もなにもできずに終ってしまいました。
この蝶については、またいつかの機会に出かけて再挑戦するつもりです。

ってわけで、ここでは、前のブログで紹介したルリモン、オオルリモンを除いた台湾のカラスアゲハ類3種をご紹介します。



カラスアゲハ(P.bianor台湾本島亜種)

本州のカラスよりはヤエヤマカラスに近く、ちょうどヤエヤマカラスアゲハとルリオビアゲハとの中間的な感じでしょうか。
日本のカラスより後翅の青い輝きが増して美しいのが特徴です。
低山地帯を中心に吸蜜、吸水に訪れる姿を見ることが出来ましたが、個体数は必ずしも多くないように思います。
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       台湾東南部・知本のカラスアゲハ
後翅の美しさが際立ちます。
ビデオからのキャプチャー画像なので、画質がいまいち(汗;)

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       宜蘭郊外のカラスアゲハ
沢山のルリモンアゲハに紛れて、ひっそりと吸水に来ていた♂(少々飛び古しの個体です)
新鮮な個体だと、日本のカラスより美しいのかもしれません。


タイワンカラスアゲハ

この蝶は、台湾産アキリデスの中では一番地味で、緑色の燐粉の輝きも少ないのですが、黒い漆の濡れたような、しっとりとビロードが光るごとき重厚な美しさは捨てがたい魅力があります。
インド北部には、近縁のオナシカラスアゲハという超稀種がいるそうですが、インドシナ半島の北部、ベトナムラオスではタイワンカラスアゲハの無尾型がいて、ますます両種は似たもの同士になっているようです。
台湾ではいろんなところで偶然に出会うものの、姿を見たいからと言ってどこそこへ行けば必ずいます、というようなものではないところが、またちょっと魅力があります。
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いずれも渓礁郷で撮影
漆黒の濡れたような美しい黒い翅。
イヴ・サンローランのデザインのようなシックでゴージャスな美しさに惚れ惚れします。


ホッポアゲハ

台湾特産のこの蝶は、数あるアキリデスのなかでも非常に美しい蝶のひとつだと思います。
後翅表の青色の鮮やかさ、裏の赤紋のあでやかさは何度見ても、ハッとするような美しさです。
この後裏の赤色のにぎにぎしさは、他のカラスアゲハ類には見られない特徴で、一説にはアケボノアゲハへの擬態ではないかといわれているようです。
確かにホッポアゲハは、高山性のアケボノアゲハと同じような標高1,000M~2000Mの場所だけに生息しています。
この蝶を写すには、やはり是非とも蜜源植物を探すことが第一で、初夏であればツツジ、夏であればタイワンソクズなどの花があれば、この蝶との出会いのチャンスも大きくなります。
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       いずれも大同郷で撮影。
ホッポアゲハの季節型でも一番美しいといわれる春型の♀です。
これもビデオからのキャプチャー画像なので、実物はこれよりはるかに美しいのですが、僅かにその雰囲気 
だけは感じていただけるでしょうか。