フトオアゲハの異態 その二

前回からのつづき

 センダングサの花で吸密する姿を初めて見たというLさんの驚きをよそに、このフトオの♂は次々に花を飛び移っていました。
 その時、轟音をたてて車が通り過ぎました。
 蝶は車の騒音と巻き上げる風に驚いて、遠くに飛び去ろうとします。
 Lさんと私は、「ああ、グッド・バイ!」とため息をつきました。

 しかし、このフトオは一旦高く舞い上がったかと思うと、そのまま遠ざかることなく、また低く降りてきました。
そして、道路わきの側溝のあたりを逡巡するような感じでゆったりと飛んでいたかと思うと、不意に側溝の中に姿を消しました。

 大急ぎで、しかし、そぉっと側溝を覗き込むと、そこには道路で轢死して頭部が潰れた蛇の死体がありました。
 驚いたことに、この♂はその蛇の死体に惹き付けられていたようです。
 そして、蛇の死体のそばに降りて、口吻を伸ばして吸汁しはじめました。
 
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2016/05/12 宜蘭
蛇の死体のそばに降りたフトオアゲハ
(この後の一連の写真は、曇天の夕暮れ時で、暗い側溝の中なので、暗い画像になってしまったのを、後から補正しています。)

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蛇の死体は、それほど時間がたっておらず、潰れた頭部以外は新鮮なように見える。

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そばに止まっては、少し飛び、また止まっては飛び立つことをしきりに繰り返す。


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死体に直接止まって、口吻を伸ばして吸汁を始めた。

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潰れた頭部から染み出た体液を吸っているらしい

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蛇の裏側まで身を乗り出して、夢中で吸汁している
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この直前にたっぷり吸蜜していたためか、
お腹がいっぱいとみえて、間もなく飛び立ってしまった。

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この間、ほんの1・2分。
ごくわずかな時間だったのと、側溝が暗く、カメラの設定をいじっていたLさんは、この興味深いフトオの行動を写すことができなかったと言って、悔しがった。

 フトオアゲハの摂食行動については、あまり詳しくは知られていない。
 従来までは、花への吸蜜だけが成虫の栄養源として考えられていたが、今回のこうした行動を目の当たりにして、Lさんはフトオアゲハの習性についてまた新たな知識を得たと興奮していた。