ビッグ・ブルーの危機
この蝶については、野生個体群は新潟の一部(現在は壊滅状態)、熊本(熊本地震で発生地の一部で土砂崩れにより土砂の下敷き)、大分の一部に残すのみという危機的な状況にあります。
保護されているのは、人為管理下にある長野と、野生では熊本の個体群のみで、新潟と大分は保護の網がかけられていません。
新潟は発生地に立ち入った採集者が、成虫だけでなく、卵・幼虫を採集・飼育するためクララの花穂をちぎって持ち帰り、知られていた数カ所の発生地はほぼ壊滅状態と言われています。
新潟は発生地に立ち入った採集者が、成虫だけでなく、卵・幼虫を採集・飼育するためクララの花穂をちぎって持ち帰り、知られていた数カ所の発生地はほぼ壊滅状態と言われています。
大分の野生群の現状についても憂慮すべき状況にあるようです。
私が加入している蝶のMLに、地元の同好者から次のような悲痛なメールが送られてきました。
以下、全文を紹介したいと思います。
ご存じのように、大分県で絶滅したと思われていたオオルリシジミが7~8年前にほぼ40年振りに再発見され、その後新しい産地が見つかっています。
しかし、今また絶滅の危機にさらされています。棲息地は連続しておらず飛び飛びの小さな領域になっています。その小さな領域に採取者がやってきてはチョウを採って行きます。
しかし、今また絶滅の危機にさらされています。棲息地は連続しておらず飛び飛びの小さな領域になっています。その小さな領域に採取者がやってきてはチョウを採って行きます。
その小さな領域の一つには2年前の連休に大勢がやってきて(1日で10人ほど)、以来観察数が激減しました。クララの花穂が沢山切り取られたこともあります。今年の連休の間、毎日観察を続けましたが0~2匹しか観察できませんでした。元々少なかったのですが個体群を維持できるかどうか厳しい状況です。
また別の領域には6日(土)の午後に採取者が来ました。そして今日7日(日)は昼の時間帯に同じ領域にまた別の採取者が来ました。採取者の帰ったその後、生息数を確認しましたが0でした。
6日(土)に採取者の来る前の生息数は交尾1、♀1,♂5でした。雄の飛び回る様子や、雄同士のおっかけっこも見ることが出来ました。
大分市 〇〇〇〇
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オオルリシジミ♀ 2017/05/20 長野県東御市↑クリックで拡大
いまは40年前とは違います。
日本の自然全体が、その生物多様性を維持できるかどうかの非常にきわどい状況にあります。
オオルリシジミやゴマ・アサマをはじめとする草原性チョウ類の危機はまさにその焦眉と言えるでしょう。
こうした危機的状況にある蝶であることをわかっていながら、それ故に採集をするなどという行為(特に蝶が産卵する花穂を大量に盗採するというのは文字通り「根こそぎ」ということです)は、たとえそれが人間の法律を犯していないとしても、生態系全体にする重大な犯罪行為だと思うのですが。
クララの花穂に止まり、産卵位置を定めようとしているところ。
オオルリシジミ♀ 2017/05/20 長野県東御市
位置を決めると尻をまげて産卵する。
オオルリシジミ♀ 2017/05/20 長野県東御市
産卵を終えると、次の場所へと飛び立っていく。
オオルリシジミ♀ 2017/05/20 長野県東御市
メスは日がな一日、産卵しては休憩ー吸蜜ー産卵を繰り返して、その短い一生を終える。
彼らが日本の自然の一部としていつまでも生き続けていてほしい、と願わずにはいられません。