悲しいことを知りました。 ー ツマジロウラジャノメ・その後 ー

  先週、台湾から帰ってきました。

 台湾旅行の報告の前にひとつ。
台湾の撮影旅行から仙台に帰ってみると、とても悲しい知らせが待っていました。
出かける直前に、ツマジロウラジャノメの第1化の発生を確認して、帰国してすぐに♀の撮影を楽しみにしていたのですが、このポイント情報を共有していた蝶友さんから、私がブログにツマジロウラジャノメの写真をアップした数日後に、この場所のツマジロウラジャノメがすっかり姿を消していたという話を聞かされました。
 彼は、私がブログに書いた翌日に、現地に出かけ♂・♀10頭ほどを確認して撮影されたのだそうですが、その二日後にまた出かけてみると、そのポイントはまったくもぬけの殻になっていて、5時間の間に一頭の姿も見かけなかったそうです。
 彼の話では、誰かが来てすべて採集してしまった可能性があるというのです。

 信じられない思いでしたが、私が信頼する撮影者以外に、あの場所を知っている人は、私が教えた一人だけしかいません。
 その方は、長年宮城県の蝶の分布や生態調査をしておられて、これまで同好誌などに調査報告や新知見の報文などをだしておられたので、私は、単なるコレクターではない、アマチュアとはいえ立派な蝶の生態研究者のお一人、と考えていた人でした。
 昨年、仙台市近郊のあちこちでツマジロウラジャノメを探していた時、よくこの方もツマジロウラジャノメを探しているということで顔を合わせました。そんなわけで、この方は、最近激しく減少してしまったツマジロの宮城県の分布の再調査をしているのだろうと考え、自分が探し当てたポイントを隠しておくのも調査しておられる方に失礼と考え、話をしたというわけでした。また以前に、ある蝶のポイントを教えていただいたという恩義を感じていたこともあります。

 ですから、蝶友さんから、おそらく採集したのはその方ではないかという話を聞いたときは、まさか手あたり次第採り尽くす単なる蝶コレクターではないはず・・・と思い、信じられなかったのですが、なんとその人はインセクト・フェアで蝶を出品したりして、標本を売っているのだそうです。
 私は、自分では決して採集はしませんが、個人の研究や趣味の範囲で標本を作る人を非難する気持ちは全くありません。でも、他人のために自分の必要を越えて採る、私利私欲の商売のために採るなどというひとは許せません。
 特に、金銭のために自然のものを採るということは、自生のサクラソウや野生ランを盗掘して売りさばくのとまったく同じです。自然から多くのものを学び、そのことを通して人生の喜びの一端を得てきた人なら、それは、そうした恩恵を得てきた自然や生き物に対する背信行為であり、倫理的にも恥ずべき行為だと思います。

 その方に対する、単なるコレクターではないだろうという勝手な私の思い込みに、後悔の思いが胸を走ります。
 最も話すべきではない人に、進んで打ち明けてしまった自分が悲しくてなりません。
 そんな昆虫商売人に教えるくらいなら、私的・個人的に標本作りを楽しんでいる蝶コレクターに知られたほうがまだずっとよかったと思います。

 残念むねん。
 ただし、これはあくまで、蝶友さんから聞いた話を基にした私の推測でしかありません。
 案外、別の誰かが、私のブログを見て、偶然にご自分で探し当て(場所のヒントになるようなことは書いていないつもりでしたが)、採集しただけのことかもしれません。

 今後、継続的にツマジロウラジャノメのキーでひっかけて、すべてのネット・オークションや、昆虫即売会をしっかりチェックするつもりです。