驚異のスペクタクル - アカシジミ -

 先日、以前からいつかはこの目でその噂を確かめてみたいと思っていた、津軽地方のアカシジミの大発生を見に出かけました。

 この驚きに満ちたアカシジミの異常な発生は、今年で8年目になるそうですが、当初、これは天敵や気候の関係によるもので、1・2年の一過的現象に過ぎないだろうと言われていました。それが、3年目・4年目でも同じことが起き、私もそれほど毎年続いているのなら、まだこの現象が終わらないうちに、是非ともこの目で確かめたいと思いました。
 5年目を迎える頃には、さすがに今年で終わりだろうと思っていると、また大発生しているという話。こんな感じでずるずると伸ばし伸ばしにしてきましたが、昨年NHKの自然番組で紹介された大群舞をみるにつけ、何としても今年こそは出かけてみようと決心しました。

 アカシジミが飛ぶ時刻は、自宅ベランダから見ていると、良く晴れた暖かい日の午後4時半ごろから、午後6時半ごろまで続きます。日が照らず、気温が低いと蝶はまったく飛びません。
 したがって、アカシジミの乱舞を眺めるには、お天気の良い、気温が高くなる日に出かけなくてはなりません。
 週間天気予報を見て、宿泊先のホテルを予約しましたが、当初絶好の条件と思われていた天気が、日ごとに変わり、予約した日は雨で気温が下がる日になっていました。急遽、予定を変更して、晴れの日を再度予約したのですが、その再予約した日も数日後には雨の予報に変わり、気温はその週の最低を予測している始末。
 これじゃ、出かけても空振りに終わるだけだと思ったところで、予定を変更しようにも、日程の変更ができず、結局、おそらくコンディション最悪と思われる日に出発せざるを得なくなってしまいました。泣;

 いいコンディションに見に行けないのは残念の極みでしたが、たとえ曇りや小雨で気温が低くても、多少の例外は必ずいるはずですし、沢山発生するからには、仙台で最高のお天気条件で眺める以上の景色は見られるかもしれない・・・また飛翔の規模は小さくても、木々に止まっていたり、栗の花などに来ている多数のアカシジミを眺めることもできるはず・・・と気を取り直して、仙台を出発しました。

 出発し、北上するに従い、空が明るくなってきました。
 青森県に入るころには、青空が覗けるほどになり、気温も25度を超えてきました。
 梅雨時の太平洋側と、日本海側の気候の違いに改めて驚かされます。

 午後1時過ぎ、現地に到着し、道路わきの栗の花をみると、いました。
 
薄曇りのなかで、アカシジミたちが栗の花に集まっていた。

大きな栗の大木の枝先に穂状に垂れ下がる花に、沢山のアカシジミが群がる。

非常に高い木なので、レンズが届かず、多少画像は悪くなるもののテレコンを使用。

この花穂の180度のどの方向にも蝶が群がっていました。
樹冠を黄色に覆うほどの栗の花穂に、オレンジ色のチョウがあふれています。
木全体でいったいどれほどのアカシジミがいるのでしょうか。

ちょっとした刺激で、吸蜜していた蝶が飛ぶと、花吹雪のような様相になりました。
オレンジ色がキラキラと無数に瞬くように点滅するさまは、圧巻です。

これは日中の風景ですが、夕刻の大群舞を髣髴とさせる瞬間です。
夕方近くになると次第に栗の花からは姿を消していきました。


オスたちの賑わいの陰で、♀はあちこちのナラの小枝で産卵に勤しんでいました。

    夕刻には、あたりは暗い曇り空に変わり、アカシジミが群舞するには少し残念な空模様となりました。それでも、薄明の中をオスたちが徐々に飛び始めました。


梢を見上げるとどんよりと曇った空を背景に、蝶のシルエットだけが飛び回ります。
動きを止める限度ぎりぎりのシャッタースピードで撮影しますが、蝶のオレンジ色はただ黒く見えるだけです。
上の3枚は不自然ですが、無理やり画像を補正したもので、やっと少しだけアカシジミの色が出ました。汗;


動画(スロー)でも撮ってみました。
蝶が遠く、あたりも暗いので極めて不鮮明ですが、全体の雰囲気が感じられるでしょうか。




ちなみに、空がよく晴れた日のアカシジミの大群舞。
開いた口が塞がらないスペクタクルです。
一日違いで、残念ながら、こんな物凄い情景を目にすることはできませんでした。
次回は、必ず最高のコンディションの時に訪れてみたいと思っています。
   撮影:成田一哉氏