うーらい渓谷

日本人が台湾に出かけたときに、必ずといっていいほど立ち寄る蝶の名所が何箇所かあります。
そのなかの一つは、台北から南に約30kmのところにある烏來です。
烏來とはタイヤル語で「温泉」と言う意味だそうですが、名の通り、渓谷に温泉が湧き出る温泉街です。
この渓谷は、日本統治時代から、蝶の多産地として有名で、戦後は台湾の一大産業とまでなった蝶工芸品でも知られていました。
いまでは、蝶工芸産業は廃れ、かつてのように多くの村人が蝶を採ったり、羽を加工したりする風景は見られなくなりました。

昔の烏來を知る人は、今の烏來の蝶の少なさに驚くそうです。
烏來渓谷は、もともとミカドアゲハの大発生地でしたが、ほかにもイナズマチョウなど、多くの台湾の珍しい蝶が棲息していたそうです。今ではそれらの影はめっきり減ってしまったと、台湾の年配の同好者は嘆いていました。農薬の使用と、観光開発による森林の伐採が大きく影響しているとのことですが、これは、烏來だけの状況ではなく、いまや台湾全土が同じような事態になっているのだそうです。
蝶がどんどんその数を減らしているのは、日本だけではないというわけです。

わたしは、台湾のトラディショナルなポイントに興味があったので、台湾に出かけて直ぐに烏來にでかけました。
時期的には、ミカドアゲハ、アオスジアゲハ、タイワンタイマイ、カバシタアゲハ、アサクラアゲハ、モクセイアゲハなどの発生期で、昔に比べて数が減ったとはいえ、深い渓谷の岸に沢山の蝶たちが吸水に訪れていました。


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烏來渓谷
渓谷の両側に、鬱蒼たる常緑広葉樹の森が広がっています。


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南国の光のせいでしょうか、岩と水の色に深みがあってとても美しい渓谷です。



タイワンタイマイ

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台湾まで来なければ姿を見ることができないGraphium。
この渓谷の砂洲に吸水に訪れるGraphiumのなかでは一番数が少ないようです。



ヒメコモンアサギマダラ

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早春の蝶、キボシアゲハの擬態モデルです。
マダラチョウの仲間はあまり吸水に来ることは少ないので、ちょっと珍しいショットかもしれません。



クロアゲハ(台湾亜種)

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日本のクロアゲハと違って、尾が無いタイプ。
渓谷を吹きすぎる強い風に横倒しになりながら、吸水していました。



フタオチョウ台湾亜種)
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別の場所にフタオチョウとアオスジアゲハ、タイワンカラスアゲハが来ていました。

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白い地に、チョコレート色の斜めのストライプが美しい。
胴体は太くて、小動物でも見るような感じです。



タッパンルリシジミ
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       このシジミチョウは、台湾各地に普通に見られます。
南山渓ではホリシャルリなどと混群を作っていましたが、なぜかここでは数が少なくて
姿を見かけたのは、数頭に過ぎませんでした。