初夏の蝦夷地

今週は一週間、北の蝶を撮影に久しぶりに北海道を旅してみました。
女満別空港に降り立ち、さっそくまずはこの初夏の風物の代名詞ともいうべき、小清水の原生花園を訪ねました。
以前に羅臼岳斜里岳の登山のついでに立ち寄ったことがありますが、9月だったのでただ背の高い草の生えた原野が見渡す限り続いていて、オホーツク沿岸のスケールの大きい風景を楽しめましたが、花の時期は今回が初めてです。
オレンジ色のエゾスカシユリ、淡黄色のエゾキスゲ、鮮やかなピンクのハマナスがそれぞれに群落を作って咲き競っている様は、まさしく原生花園という表現にぴったりです。
大雪山の見事な高山植物帯の花園とは違い、背丈も花も大きく、大変に見ごたえのある景色でした。

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エゾスカシユリの群生 2014/07/12 小清水原生花園

ここでの目的の蝶は、イシダシジミ(アサマシジミ 北海道亜種)とリンゴシジミ、フタスジチョウ(道東)です。
以前から目を付けていた網走湖周辺に移動し、近くの林道や山道に分け入ってみました。
小さな流れの淵に沿って、クサフジナンテンハギが群生している場所を見つけ、カバイロシジミやエゾヒメシロチョウも期待できるかと周囲を見渡しても、それらしき蝶はさっぱり見かけず、チラチラと飛ぶ青い蝶はヒメシジミだけです。
出発前から聞いていたことですが、イシダシジミはかつて知られていた生息地はどこも壊滅状態で、今では数か所だけでしか出会えないという超難物ですが、それでもどこか人知れず生き残っている個体群はいないものかとダメもとで歩いてみたのですが、やはり影も形も見えません。
リンゴシジミは時期的にはもう遅いという話で、これも望み薄かとあまり期待していませんでしたが、さすがここは道東。寒さが他とは違うようで、一頭の♀を見つけることができました。
ホソバヒョウモン、カラフトヒョウモンなどもこのあたりにはいない様子。
その代わり、東北では青森の一部にしかいないヒョウモンチョウが沢山見られたのは収穫でした。

     
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2014/07/12 ヒョウモンチョウ  網走湖               DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
北海道では、オホーツク海沿岸などの開けた乾燥草原にヒョウモンチョウが、
内陸の湿潤な草地にコヒョウモンがそれぞれに住み分けています。 

 
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2014/07/12  ヒョウモンチョウ 網走湖                      DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm

とても新鮮な♂です
ヒメジョオンで吸蜜した後、花を離れて飛び上がる瞬間を狙ってみました


 
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2014/07/14 フタスジチョウ 留辺蘂                          DMC-GH4 f/10 1/160s ISO-200 45-175mm
白帯が広いフタスジチョウの北海道亜種 
北海道でも道東のものは更に白い帯が広くなるそうです

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2014/07/13 リンゴシジミ 網走湖                   DMC-GH4 f/5.6 1/1000s ISO-400 45-175mm
 
もう時期が遅くてダメかと思っていたリンゴシジミを見つけました
これは♀
リンゴシジミ特有の後翅表面の紅紋がわずかに見えます
 
 
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2014/07/13 リンゴシジミ 網走湖                   DMC-GH4 f/5.6 1/1000s ISO-400 45-175mm
 
紅紋列の内側の黒斑が●になるのがリンゴシジミの特徴
地色もほかのカラスシジミ類に比べて淡い感じがします
 
 
 
イメージ 92014/07/13 カラスシジミ 網走湖                         DMC-GH4 f/5.6 1/1300s ISO-400 45-175mm
 
カラスシジミは本州では広範な生息の割には、なかなか観察する機会がなく、撮影も難しい種類の一つですが、北海道では食樹のニレ類が豊富なせいか、あちこちでその姿を観ることができました。
 
 
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2014/07/13 カラスシジミ 網走湖                          DMC-GH4 f/5.6 1/800s ISO-400 45-175mm
 
林縁に群落をなすエゾイラクサに執着して離れない挙動不審なカラスシジミの♀。
しきりにエゾイラクサに止まっては茎や葉上を歩き回っていましたが・・・
 

 
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2014/07/13 カラスシジミ 網走湖                          DMC-GH4 f/5.6 1/800s ISO-400 45-175mm
 
この個体は、なにやら尻を深く曲げて、エゾイラクサの葉柄に先端をこすりつけています。
驚いたことに、この草に産卵しているようです
カラスシジミの食草はハルニレなどの楡が知られていますが、草本類への産卵は記録はないと思います。
この産卵の様子は、じっくりと動画で撮影しました。
 
 
 
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2014/07/13 アカマダラ 網走湖                         DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
北海道特産種のひとつ、アカマダラ
地面から飛び立つ夏型♂
この時期、発生したばかりの綺麗な個体と、春型のボロボロの個体が入り混じっていました
 
 
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2014/07/13 ウラゴマダラシジミ 網走湖                     DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
たった一本のイボタの木にやはり居ました、ウラゴマダラシジミ
♀に求愛の挨拶をする♂
産卵しようとしている♀に♂が入れ代わり立ち代わり飛んで来ました
 
 
 
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2014/07/13 ウラゴマダラシジミ 網走湖                     DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
北海道産の白い部分が発達する特徴が良く出た♀
枝から枝へと産卵のために飛び移る
 
 
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2014/07/13 コキマダラセセリ 網走湖                      DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
このイボタは開花の真っ最中
いろんな蝶が吸蜜に集まっていました
黄色いセセリ・・・まだ見ぬカラフトセセリかと思いきや、コキマダラセセリでした。
名前に反して、本州では図体がでかいこの蝶も、北海道では名の通りやや小型のキマダラセセリとなります
 
 
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2014/07/13 コキマダラセセリ 網走湖                       DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
翅を半開して止まる多くのセセリ類の翅表全開を目にするチャンスは、意外と少ないものですが
飛び上がった瞬間、その全開の様子を偶然に撮影することができました
 
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2014/07/13 コキマダラセセリ 網走湖                      DMC-GH4 f/5.6 1/1600s ISO-400 45-175mm
 
厚ぼったい金色の羽毛と、つぶらな黒い眼が、昆虫というより、小動物を思わせるようなかわいらしさ
 
 
 
 
北海道編 つづく