山形の山里で  - チョウセンアカシジミ -

 
 先日、ある蝶友さんから「悲しいことがありました」というメールをいただきました。
 新潟の●●市郊外のチョウセンアカシジミを撮影に行ったら、関東ナンバーの車で乗り付けた二人が、地元の方が採集禁止と告示している場所でチョウセンアカシジミを採集していて、ちょうど蝶友さんが現場に着いた時、大急ぎで逃げ出したとのこと。
前日の下調べで10頭ほどの発生を確認していたので、撮影を楽しみにして出かけてみたら、一頭だけしかいなくなっていてガッカリしたそうです。
 しかたなく別の場所に移動すると、発生地の所有者の方が大変怒っておられたので、その理由を尋ねると、去年心無い採集者に畑を踏み荒らされたということで、この蝶友は、畑には踏み込まないように十分注意していたにもかかわらず、撮影者も含めてここへは立ち入ってほしくない「かえれ!」と、激しい剣幕だったそうです。

採集者のマナーの悪さは、怒られて当然ですが、そのとばっちりを受ける方はお気の毒です。
マナーについては、採集者ばかりではなく、撮影する場合でもやはり夢中になってマナーなど考える余裕もつい失くしてしまいがち。
お互い、注意しないとね。自戒を込めて・・汗;


 先週、蝶友のFさんを誘って、山形のチョウセンアカシジミを撮影に行きました。

 山形のチョウセンアカシジミは、地元の方々の保護意識が強く、新潟と同じように、一部の地域では他地域からの立ち入りを制限したところさえあるそうです。
 こうした活動に、さすがに最近は採集者が訪れることもめっきり少なくなり、写真撮影をむしろ歓迎する地域もあります。
 置賜郡の川西町もその一つで、保護する会の会長・Sさんに、発生地への立ち入りの許可をお願いしたところ、快く撮影の承諾を戴いたばかりでなく、わざわざご多忙のところ現地の案内をしてくださいました。また、川西のチョウセンアカシジミが同町内に定着するようになった里の人々の生活形態のお話まで聞かせて頂きました。

 Sさんの「数日前から羽化が始まりました。どうぞたっぷり撮影して行ってください」とのお言葉通り、発生地はまさしく発生期真っ只中で、汚れもかすれもない真新しいチョウセンアカシジミたちが群れ飛ぶさまをじっくり撮影することができました。

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2015/06/10 山形県川西町
午前中、トネリコ林の下草には、一晩を過ごしたチョウセンアカシジミがまだ翅を休めていた。
チョウセンアカシジミや近縁のウラキンシジミは、夕刻の活動時間を終えると、低い樹上の葉や、林床に降りて夜を過ごす個体も多いらしい。

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2015/06/10 山形県川西町
陽が高くなると、徐々に動き出す。
翅をV字に開いて体温を温めて活動に備えているかのようだ。
山形産特有の黒化型。

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2015/06/10 山形県川西町
下草から近くのやや高さのある木々の葉に飛び移る。
中空の場所に陣取って、午後の日が傾いてくるのを待っているらしい。
三陸産に近い、明るいオレンジ色の個体。

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2015/06/10 山形県川西町
正面から撮ってみました。
これでは何の蝶なのか判らないですね。笑

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2015/06/10 山形県川西町
午後3時を過ぎる頃、いよいよ飛び始めた♂

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2015/06/10 山形県川西町
翅の丸みと白いからだが可愛らしい。

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2015/06/10 山形県川西町
日が傾くにつれ、蝶の飛び方も活発になっていく。
逆光を透かしたオレンジ色が美しい。

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2015/06/10 山形県川西町

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2015/06/10 山形県川西町
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      2015/06/10 山形県川西町
      ♂どうしの卍巴飛行があちこちで展開される。

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2015/06/10 山形県川西町
午後4時半を過ぎる頃には、蝶の飛翔活動はさらに激しくなり、3頭以上がもつれ合うことも頻繁に見られた。
個体数もすこぶる多く、かえって撮影のターゲットを絞るのが難しいほどです。汗;

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         2015/06/10 山形県川西町
         上の画像と同じ3個体。
         羽ばたいて、ちょうど裏表が逆になったところ。


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2015/06/10 山形県川西町
最後の一枚は、この日羽化したと思われるピッカピカの♀。
鱗粉の形が他の蝶と違って、一個一個先が毛ば立つように尖り、厚ぼったく立体的なのがわかります。


今回の山形での撮影は、川西町保護の会の外部者の受け入れも含めて、これからの希少種保護の在り方について思いを致す貴重な機会となりました。
Sさん、どうも有り難うございました。