チョウセンアカシジミの代置種 - タカラシジミ -

 私が台湾に出かけた6月上旬は、例年ならゼフィルスの最適期のはずでしたが、今年は日本同様、すべての蝶の発生時期が早く、多くのめぼしいゼフィルスは5月中に出尽くしておりました。
 ターゲットのひとつだったホウライミドリシジミは、日本のキリシマミドリシジミの台湾代置種と言えますが、日本以上に、撮影が難しいゼフの一つです。
 ところが、今年はフレンドリーな一頭の♂がいて、某ポイントに毎日姿を見せていたそうです。
うわさを聞き付けた台北や高雄方面からカメラマンが連日殺到していたそうですが、あろうことか、私が台湾に出かける前日から姿を見せなくなったそうで、私は結局一度もホウライミドリシジミの姿を拝むことができませんでした。
 林さんのフジミドリと正反対のパターンで、残念でしたが、その代わり、この時期にしてはかなり時季外れなゼフを撮影することができました。
 タカラシジミです。
 この蝶の発生時期は4月下旬~5月上旬で、ほかのゼフィルスより2週間以上も早く出現するもののようです。
 都合3回、この蝶を見つけましたが、1頭はとてもきれいな♀で、ホウライが写せない代替として、気分としては十分満足することができました。

 日本のウラキンシジミやチョウセンアカシジミに近縁なオレンジ色をしたゼフで、台湾の高地帯に大陸や日本の代置種がいる例の一つでもありますが、ミドリシジミグループの多くがヒマラヤ系であるのに対し、これはタニカドミドリシジミと同様、朝鮮・ウスリー系の北方に由来するゼフと思われます。
 ほかのゼフに比べて、やや大型。チョウセンアカの1・5倍以上のサイズで、その色の美しさと相まってとても見ごたえがありました。

 北方由来にも関わらず、標高400m前後の山地から標高2000mほどの高地帯まで生息範囲の幅は広いのですが、発生地は限定的とされています。
 台湾の蝶産業が盛んな時代、この蝶は家が建てられるほどの高額な値段で売れたと言われ、タカラシジミという名の由来になったそうですが、真偽のほどはわかりません。笑

6月初旬のこの時期にしては、とても新鮮な♀。 

チョウセンアカシジミのサイズをデカくして、長い尻尾をつけたような美しい姿です。

梢の葉にとまり、葉の表面に分泌された甘露のようなものを吸汁している様子。

つぎつぎといろいろな蝶が訪れる面白いポイントでしたが、スズメバチの一種がこのに噛みついて追い落とそうとするバトルに遭遇しました。

少し翅の痛んだ♀のところに、蜂がやってきた。


驚いた♀は、飛び上がろうとして羽ばたいたが・・


まてまて!とばかりハチがタカラシジミの後翅に前足をかける。


ハチは飛んで逃げようとする蝶の羽をしっかり噛みついて離さない。
近くにとまっていたエサキウラナミジャノメがこの騒ぎに驚いて飛び上がった。


翅をばたばたさせてもがくが、がっしりと捕まってしまった。


なおも逃れようとするタカラシジミ


     完全につかまり、飛ぶのをやめてしまった。

         結局、蜂にさらわれるようにして、このタカラシジミは下に落下していった。
    単なる甘露の場所争いなのか、この蝶がハチの餌食になってしまったのかは、わかりません。

殆どカスレも擦れもない、羽化間もないような個体に、案内してくれた林さんは、とてもラッキーだと言ってくれました。