北海道と本州のファミリーたち

 北海道と本州中部には、北方系の同一種または同一ファミリーの蝶がいます。
 今度の北海道と信州掛け持ち旅行では、運が良ければ、これらの蝶を一回の旅行で一挙に写してしまうことができるかもしれないと期待しました。

 ブログ主が特に今回是非とも北海道・本州中部の両方を撮影をしたいと考えたのは、そのなかでも稀少性が高く、かつ見た目に美しいゴマシジミ、アサマシジミ、ベニヒカゲ・クモマベニヒカゲ、それにタカネキマダラセセリ・ファミリー、ヒメヒカゲ・ファミリーでした。

 結果的には、片方だけでしか撮影できなかった種類が多く、曲がりなりにも双方の場所で撮影できたのは、アサマシジミ、タカネキマダラセセリ・ファミリー、ヒメヒカゲ・ファミリーでした。

 今回は、案内した台湾の友人が特に撮影を望んでいたヒメヒカゲ・ファミリーをアップしてみたいと思います。



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シロオビヒメヒカゲ♀ 2016/07/18  北海道遠軽町
 この時期、すでにして古い個体が多く、なんとかまともな翅形を保ち、鱗粉もなんとか見られるのものは、ほとんど見当たりません。これはまだそれほど汚損していないようです。


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シロオビヒメヒカゲ♀ 2016/07/18  北海道遠軽町 
このメスはだいぶ古くなっているものの、白い帯が若干流れ気味の幅広個体だったのでレンズを向けました。

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2016/07/18 上♀下♂  北海道遠軽町
どちらも破損がひどい。
この種は、タカネヒカゲ類のように、止まると体を横に傾ける性質があるようです。
フキに止まったこの2頭もそれぞれの角度で体をかしげていました。

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シロオビヒメヒカゲ♀ 2016/07/18  北海道遠軽町
アップに堪えるのはこの♀ぐらい。
新鮮なシロオビヒメヒカゲは白い縁毛、白い帯、目玉の銀色、目玉を縁取る鮮やかなオレンジ、翅を隈取る銀帯の組み合わせがまことに品があって美しい蝶なのですが、すっかり色が落ちてその魅力の一端がわずかにうかがえるだけです。

次の機会には、もう2週間ほど早く出かけて、新鮮なシロオビヒメヒカゲを撮影してみたいものです。

シロオビヒメヒカゲを撮影したその4日後、私と友人は信州の霧ヶ峰で、ファミリーのもう一つのメンバーを探しました。


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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
信州でこの蝶が生き残っているのは、たった2か所。
その一つ、霧ヶ峰高原に棲む一団は、なかなか人が立ち入りにくい場所を住処にしています。
腰丈ほどの藪のなかに、6年ぶりにその姿を見つけました。

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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
やや標高の高いこの場所では、いまやっと発生が始まったばかりのようです。
非常に新鮮なオスでした。

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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
 風衛草原のため、常に強風が吹き、ススキなどが生えることができないわずかに残った背丈の低いスゲの草地に、縋りつくようにして発生しています。

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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
気品のある裏面を開くと、翅表はなんの変哲もない真黒な意匠。
それでも翅の形がまん丸でかわいい蝶です。

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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
一見地味ななかに、目玉模様のリングが金色、翅のフチに細い銀帯を配して、見れば見るほど味わいの深い蝶だと思います。

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ヒメヒカゲ♂ 2016/07/22  霧ヶ峰高原
発生盛期までまだ数日はあるようで、この日観察できたのは3頭のみでした。
数はすくないものの、発生直後の美しいヒメヒカゲをじっくりと丁寧にピントを合わせて撮影させてもらいました。
台湾の友人は、彼のお気に入りの日本の蝶のベスト2だと言って、夢中になって撮影していました。


 この猫の額ほどに残された貴重な発生地がいつまでも残っていてほしいと願いながら、ヒメヒカゲたちに別れを告げて山を下りました。