アサマ三兄弟
北海道と信州を10日間で駆け抜ける撮影旅行で、最大の目標は、アサマシジミの代表的な地方型を一挙に撮影してしまう、ということでした。
アサマシジミは、北海道と本州中部のみに生息し、東北にはいない蝶の一つです。
発生時期が、東北のゼフィルスの発生初期と重なるため、アサマシジミは以前から気になっていてもなかなか撮影の為に県外に出かけるという機会がありませんでした。
しかし、ほかのブログの方々の写真を見るにつけ、アサマシジミのあの独特のグレーが入った渋い水色の色合いの魅力に惹きつけられます。
アサマシジミ(Plebejus subsolanus)は各地方の変異が、大きく次の3つのタイプに区分されています。
P. s. iburiensis〈北海道型〉
P. s. yarigadakeanus〈本州中部高山型〉
P. s. yaginus〈本州中部低山型〉
いずれの地方型も、ほかの草原性蝶類と同様、衰退が激しく、北海道と本州高山型は絶滅寸前の危機にあると言っていい状況となっていますし、離散的ではあっても比較的安定的に見られた低山型もこの数年、あちこちの生息地が消滅していて、限られた発生地への採集圧もあり、これも放置すれば数年にして危機的事態に陥るのは明らかのように思えます。
そんなアサマシジミの衰退ぶりを聞きながら、今年こそは、との思いを重ねていた時に、今回の北海道・信州撮影旅行を計画することになりました。
しかし、残念ながら、台湾のLさんの来日の日程が7月14日から24日ということで、北海道特産種の多くや、北アルプス周辺の蝶の発生期には程よいタイミングですが、アサマシジミには少し遅すぎたようです。
結果的には、北海道型と本州中部低山型はメスのみ。
本州高山型はオスのみという結果になりました。
ブログ主の狙いとしては、それぞれの♂♀の表裏、開翅を撮影して、一堂に並べて比較してみたいというものでしたが、やはりそれは贅沢な高望みというものだったようです。(汗;)
まずは、旅の三日目、遠軽町に入りました。
北海道のアサマシジミ(イシダシジミ)は、現在では確実な発生地としては道内ただ一か所だけで、猫の額ほどの草地に発生しています。昨年までは野放しの状態でしたが、今年からやっと保護の網がかけられることになりました。
昨年、この発生地が保護区に指定されそうだという動きを知った某採集者が、100頭以上の幼虫を盗採するという事件があり、この保全計画自体が終わってしまいそうになりました(保全する対象がいなくなってしまうのでは計画自体が無意味になります)。
昨年、100頭ほど累代飼育で得たものだと言いながら、イシダシジミの幼虫を自分ではえさ不足から飼育しきれず、ネットで他の同好者に10~20頭ずつ分け与えていた人物がいましたが、ブログ主はこの人物が当の採集者ではないかと疑っています。累代飼育をしていると自称する人が、100頭程度のシジミチョウの幼虫を飼育する食草(そこらの草やらにいくらでも自生)に不足するなどあり得ない話で、その事実自体が虚偽を証明していると思えます。
ともあれ、それでも6月20日ごろからイシダが発生し始めたというニュースを聞いてほっとしたのですが、例年よりも2週間以上も早いということで、私たちが出かけた7月下旬には、ボロボロになったごくわずかな♂と比較的綺麗な♀という状況でした。
イシダシジミ♂ 2016/07/28 北海道・遠軽
♂はこの個体のみ。残念ながら開翅を写す間もなく飛んでしまいました。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
♀はまだ翅が壊れている個体もすくなく、比較的新鮮でした。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
北海道型♀の最大の特徴は、表後翅に赤い紋列が薄いか、全くなく、全面黒色になってしまうこと。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
とても綺麗な♀。鱗粉の剥落もほとんどなく、新鮮そのものです。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
静止姿勢から飛ぶのをひたすら待ち構えて撮った一枚。
裏面がうまく出ました。
イシダシジミを撮影した3日後、上高地にアサマシジミの高山型(ヤリガタケシジミ)の姿を探しました。
上高地のヤリガタケシジミを尋ねるのは今年で3回目。
過去2回では、それなりにヤリガタケの姿をとらえることができたものの、若干時期的に遅くて擦れたものが多かったり、綺麗な開翅を撮影したことがありません。
今回は昨年より数日早いので、新鮮な個体に巡り合える期待が膨らみました。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
狭い山合いの涸れ沢に日がかかるころ、姿を現した新鮮なオス。
両翅の縁毛もそろった綺麗な個体です。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
同じ♂。ズームで寄ってみた。
ここにはヒメシジミも沢山いて、こんな風に拡大してみないとヤリガタケかどうかを確認するのは難しい。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
上高地のアサマシジミの特徴の一つは、ヒメシジミ並みの小型サイズがいることです。
このオスも、はじめはヒメシジミだとばかり思っていましたが、よくよく見るとアサマの斑紋でした。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヒメシジミがヨモギなどに好んで絡む一方、ヤリガタケはやはり食草のイワオウギに執着することが多いようです。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
吸密から飛び立つところを、すかさずシャッターを切りました。
静止開翅でないところがすこし残念。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
アサマらしい、ヒメよりは少し大きめのサイズ。
上の写真を撮影してから30分ほどして現れたのは、同じ個体のようです。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヤマハハコの花の上で、くるりと360度の回転しながら吸密してくれた。
このポイントで見かけたヤリガタケの個体数はとても少ないようで、同じ数頭の個体が30分ほどの間隔で、入れ替わり立ち代わり現れるという頻度です。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
このヤリガタケは、上の写真とは別の場所でみかけました。
はじめはヒメシジミと思いましたが、どうも色合いが灰色がかった水色なのと、少し大きめだったので、止まったところをじっくり見てみるとヤリガタケなので、驚きました。
翌日、霧ヶ峰と白樺湖に移動し、低山型アサマの撮影に向かいました。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
有名産地、霧ヶ峰では♂の姿は全く見かけず、メスも多くは擦れてしまっていました。
仕方なく、近くのほかの発生地に移動しました。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
このポイントではメスはまだ新鮮。
しかし、なぜか♂がさっぱりいない・・・・不思議
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
本州♀の特徴は、北海道産とは違い、ヒメシジミのように後翅に赤紋列がでること。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
低山型は、明らかにヒメシジミより大型でした。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
ここのアサマシジミの♀は、翅裏の黒斑が目立って大きく発達する個体が多いようです。
♂はどういったものか興味深かったが、姿をさっぱり見かけず、撮影することができなかったのが残念。
今回は、アサマシジミ地方型3タイプを一挙撮影の暴挙を企てましたが、やはり時期的に合わないことがわかりました。来年以降は、それぞれの適期に合わせて、別々に撮影にでかけ、綺麗なグレー・ブルーを撮影したいものです。
アサマシジミは、北海道と本州中部のみに生息し、東北にはいない蝶の一つです。
発生時期が、東北のゼフィルスの発生初期と重なるため、アサマシジミは以前から気になっていてもなかなか撮影の為に県外に出かけるという機会がありませんでした。
しかし、ほかのブログの方々の写真を見るにつけ、アサマシジミのあの独特のグレーが入った渋い水色の色合いの魅力に惹きつけられます。
アサマシジミ(Plebejus subsolanus)は各地方の変異が、大きく次の3つのタイプに区分されています。
P. s. iburiensis〈北海道型〉
P. s. yarigadakeanus〈本州中部高山型〉
P. s. yaginus〈本州中部低山型〉
いずれの地方型も、ほかの草原性蝶類と同様、衰退が激しく、北海道と本州高山型は絶滅寸前の危機にあると言っていい状況となっていますし、離散的ではあっても比較的安定的に見られた低山型もこの数年、あちこちの生息地が消滅していて、限られた発生地への採集圧もあり、これも放置すれば数年にして危機的事態に陥るのは明らかのように思えます。
そんなアサマシジミの衰退ぶりを聞きながら、今年こそは、との思いを重ねていた時に、今回の北海道・信州撮影旅行を計画することになりました。
しかし、残念ながら、台湾のLさんの来日の日程が7月14日から24日ということで、北海道特産種の多くや、北アルプス周辺の蝶の発生期には程よいタイミングですが、アサマシジミには少し遅すぎたようです。
結果的には、北海道型と本州中部低山型はメスのみ。
本州高山型はオスのみという結果になりました。
ブログ主の狙いとしては、それぞれの♂♀の表裏、開翅を撮影して、一堂に並べて比較してみたいというものでしたが、やはりそれは贅沢な高望みというものだったようです。(汗;)
まずは、旅の三日目、遠軽町に入りました。
北海道のアサマシジミ(イシダシジミ)は、現在では確実な発生地としては道内ただ一か所だけで、猫の額ほどの草地に発生しています。昨年までは野放しの状態でしたが、今年からやっと保護の網がかけられることになりました。
昨年、この発生地が保護区に指定されそうだという動きを知った某採集者が、100頭以上の幼虫を盗採するという事件があり、この保全計画自体が終わってしまいそうになりました(保全する対象がいなくなってしまうのでは計画自体が無意味になります)。
昨年、100頭ほど累代飼育で得たものだと言いながら、イシダシジミの幼虫を自分ではえさ不足から飼育しきれず、ネットで他の同好者に10~20頭ずつ分け与えていた人物がいましたが、ブログ主はこの人物が当の採集者ではないかと疑っています。累代飼育をしていると自称する人が、100頭程度のシジミチョウの幼虫を飼育する食草(そこらの草やらにいくらでも自生)に不足するなどあり得ない話で、その事実自体が虚偽を証明していると思えます。
ともあれ、それでも6月20日ごろからイシダが発生し始めたというニュースを聞いてほっとしたのですが、例年よりも2週間以上も早いということで、私たちが出かけた7月下旬には、ボロボロになったごくわずかな♂と比較的綺麗な♀という状況でした。
イシダシジミ♂ 2016/07/28 北海道・遠軽
♂はこの個体のみ。残念ながら開翅を写す間もなく飛んでしまいました。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
♀はまだ翅が壊れている個体もすくなく、比較的新鮮でした。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
北海道型♀の最大の特徴は、表後翅に赤い紋列が薄いか、全くなく、全面黒色になってしまうこと。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
とても綺麗な♀。鱗粉の剥落もほとんどなく、新鮮そのものです。
イシダシジミ♀ 2016/07/28 北海道・遠軽
静止姿勢から飛ぶのをひたすら待ち構えて撮った一枚。
裏面がうまく出ました。
イシダシジミを撮影した3日後、上高地にアサマシジミの高山型(ヤリガタケシジミ)の姿を探しました。
上高地のヤリガタケシジミを尋ねるのは今年で3回目。
過去2回では、それなりにヤリガタケの姿をとらえることができたものの、若干時期的に遅くて擦れたものが多かったり、綺麗な開翅を撮影したことがありません。
今回は昨年より数日早いので、新鮮な個体に巡り合える期待が膨らみました。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
狭い山合いの涸れ沢に日がかかるころ、姿を現した新鮮なオス。
両翅の縁毛もそろった綺麗な個体です。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
同じ♂。ズームで寄ってみた。
ここにはヒメシジミも沢山いて、こんな風に拡大してみないとヤリガタケかどうかを確認するのは難しい。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
上高地のアサマシジミの特徴の一つは、ヒメシジミ並みの小型サイズがいることです。
このオスも、はじめはヒメシジミだとばかり思っていましたが、よくよく見るとアサマの斑紋でした。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヒメシジミがヨモギなどに好んで絡む一方、ヤリガタケはやはり食草のイワオウギに執着することが多いようです。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
吸密から飛び立つところを、すかさずシャッターを切りました。
静止開翅でないところがすこし残念。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
アサマらしい、ヒメよりは少し大きめのサイズ。
上の写真を撮影してから30分ほどして現れたのは、同じ個体のようです。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
ヤマハハコの花の上で、くるりと360度の回転しながら吸密してくれた。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
このポイントで見かけたヤリガタケの個体数はとても少ないようで、同じ数頭の個体が30分ほどの間隔で、入れ替わり立ち代わり現れるという頻度です。
ヤリガタケシジミ♂ 2016/07/21 上高地
このヤリガタケは、上の写真とは別の場所でみかけました。
はじめはヒメシジミと思いましたが、どうも色合いが灰色がかった水色なのと、少し大きめだったので、止まったところをじっくり見てみるとヤリガタケなので、驚きました。
翌日、霧ヶ峰と白樺湖に移動し、低山型アサマの撮影に向かいました。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
有名産地、霧ヶ峰では♂の姿は全く見かけず、メスも多くは擦れてしまっていました。
仕方なく、近くのほかの発生地に移動しました。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
このポイントではメスはまだ新鮮。
しかし、なぜか♂がさっぱりいない・・・・不思議
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
本州♀の特徴は、北海道産とは違い、ヒメシジミのように後翅に赤紋列がでること。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
低山型は、明らかにヒメシジミより大型でした。
アサマシジミ♀ 2016/07/22 白樺湖
ここのアサマシジミの♀は、翅裏の黒斑が目立って大きく発達する個体が多いようです。
♂はどういったものか興味深かったが、姿をさっぱり見かけず、撮影することができなかったのが残念。
今回は、アサマシジミ地方型3タイプを一挙撮影の暴挙を企てましたが、やはり時期的に合わないことがわかりました。来年以降は、それぞれの適期に合わせて、別々に撮影にでかけ、綺麗なグレー・ブルーを撮影したいものです。