ノーザン・ブルー  北海道へ

 しばらく拙ブログの更新をサボってしまいました。・・・汗;
 
 先日、台湾の友人が来日して10日間、一緒にあちこちの撮影旅行をしておりました。
 数日なら毎度のことですが、今年5月のように国外に出かけるのは別として、10日間も蝶の撮影の為に国内を旅して歩くなど、初めてのことです。
 
 台湾の友人は、今年4月に仙台に来て、彼の長年の念願だったギフチョウヒメギフチョウを撮影しました。
 彼はギフ撮影時に触れた日本の春の風景に感銘を受けたようで、台湾とは違う日本の自然環境をもっと知りたいという欲求が増大したようです。

 日本の蝶のベスト・シーズンにまた日本を訪れたいという彼の希望に応えて、7月中旬から下旬に北海道と信州山岳地帯に生息する北方系の蝶を尋ねて歩く撮影旅行を計画しました。
 ブログ主にとって、北海道へ蝶の撮影の目的で訪れるのは、3回目です。
 これまで季節はずれ、天候不順などでまだ会ったことがない北海道特産の未撮影種を今度こそしっかり写してみたい、という思いもありました。



 しかし、友人が来日する2日前、思いがけないアクシデントが起こりました。
 近くの山で一日撮影をしていて、足の裏に2cm大の靴擦れを作ってしまったのです。
 翌日床から起きると、足裏に大きな水泡が出来ていて、たった数歩さえ痛くて歩くことができない状態になっていました。

 計画では、毎日のように標高1000Mを超える山をとっかえひっかえ登ったり降りたりする行動なので、この足の状態では到底無理だと判断せざるを得ませんでした。
 そこで、急きょ北海道の航空券・レンタカー・宿泊の予定をすべてキャンセルし、5日後の信州のスケジュールだけをこなすことに決めました。5日も経過すれば、なんとか治癒すると考えたからです。

 友人に事情を伝え、なにせもう一日後のことなので、とりあえず来日の日程だけは変えずに仙台に来てもらうことにしました。彼もせっかく楽しみにしていた北海道旅行がキャンセルとなるのはさぞかしガッカリだったことと思います。

 その日は、一日歩くこともできないまま家で過ごし、翌日目が覚めると、足裏の水疱は巨大になっていましたが、痛みは和らいでいました。
 多少痛みが和らいだというものの、大きな水泡に少しでも体重がかかると歩くどころではありません。
 仙台の天気予報では、この先一週間は毎日雨か曇り。
 無為のまま、仙台に遠来のお客を5日間も留めておくわけにはいきません。
 山登りなどは出来ないとしても、車乗り付けのポイントならば撮影もできるかもしれないと考え直し、一旦はキャンセルした北海道旅行のすべての予約を、再度取り直しました。

 旅行出発当日、一計を案じて、足裏の水疱に体重が直にかからないように、テイッシュや綿で患部の周りに土手を作るように高いガードを作り、それを大きなカット判で覆うように貼り付けました。具合のいいことに、このようにすることでなんとか普通に歩けるようになりました。
 旅の間中、ブログ主は毎朝この土手作りにいそしむことに。笑

 さて、初日は仙台から新千歳へ移動。レンタカーで上士別へ入りました。
 翌日、ホテルから車でカラフトルリシジミのポイントに。

 カラフトルリシジミは、北海道でも大雪・日高山系、根室知床半島などの特に寒冷な場所にだけ生息する典型的な北方系の美しいチョウです。
 ルリシジミ系特有の深い青色が輝く翅表と、翅裏の細かい紋様が独特の気品に満ちていて、この蝶をまだ見ぬブログ主にとっても、今回の旅行では最っとも撮影したいものの一つでした。
 過去2回の北海道撮影旅行では、大雪山のカラフトルリのポイントと言われる桂月岳を探したものの、一頭も見つけることができずに敗退してきました。
 今回は三度目の正直、というわけです。

 空模様は曇り時々晴れ。
 山の麓で足慣らしをしたあと、恐る恐る山を登りはじめました。
 患部に直接に体重がかからず、なんとか歩けるようです。
 下山時には水疱が圧迫されて破れ、歩けなくなるかもしれないという懸念はありましたが、その時は友人の力を借りて下山するつもりでポイントに向かいました。

 山頂に付くと、早速カラフトタカネキマダラセセリが出迎えてくれました。
 普通のルリシジミも飛んでいます。
 ここの岩場には、ナキウサギも棲んでいて、多くの登山者がナキウサギ見たさにこの山に登るようです。

 肝心のカラフトルリシジミはさっぱり姿を見せません。
 さては、まだ早すぎたかなと心配するうち、コヒオドシやオオイチモンジが現れました。

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コヒオドシ♂ 2016/07/16 上士別

右前翅にわずかなスレがあるものの、非常に新鮮なオス。
低地にいるヒオドシチョウに比べて、コンパクトでくっきりとした紋様が印象的。
何度見ても小粋で、いい蝶です。


 
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オオイチモンジ♂(友人撮影) 2016/07/16 上士別

こんなところで、早くもオオイチモンジに会えるとは・・・
この蝶の食樹は寒冷な渓谷沿いに生えるので、こんな山のてっぺんにいるとは夢にも思いませんでしたが、飛翔力の強い種であってみれば、山頂占有性があって当然のことですね。
台湾からはるばる訪れた友人を歓迎するかのように、彼の目の前に舞い降りましたが、私が撮影しようとするときには飛び立ってしまいました。
ここに掲載した画像は友人が撮影したものをお借りしたものです。


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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別

お昼近くになって、山頂付近の気温が上がってきた頃、やっと目的の蝶が現れました。
思った以上に小さく、可愛らしい蝶で、素早く飛ぶので見失いやすい。
このような岩の上に好んで止まるようです。
恐らく翅裏の色と保護色上の関係があるのかもしれません。


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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
日光浴の為に、翅を全開しました。
濃いブルーが美しいですね。

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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
北海道特産の高山植物、チシマフウロの花で吸密。
発生初期と思われ、どのオスも綺麗な個体です。


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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
当然ながら、飛びものを狙います。
翅全開でピントバッチリ、は意外に難しいものですが、この時はうまくいきました。汗;;

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      カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
      この蝶が、ルリシジミ系というよりはヒメ・ミヤマ系のブルー・ファミリーに属することがよくわかります。

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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別

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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
翅表面と胴体の羽毛一本一本が日を浴びて輝いていました。


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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
もっともオーソドックスで、蝶の姿が一番美しく見える角度からの一枚。

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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
翅を半開きにしたまま動かないので、よく見てみると葉の上にある水玉から吸水していました。
三つ葉に似た葉の形と、真上からみたカラフトルリの半開きの翅の形のパターンが相似して、なかなかいい雰囲気です。


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カラフトルリシジミ♂ 2016/07/16 上士別
僅かに左後翅の縁毛が欠落しているものの、見事な全開。


この後、恐る恐る足を試すような感じで無事下山し、麓のシロオビヒメヒカゲやエゾシロチョウを撮影して、長い旅の第一日を終えることができました。
この山麓の撮影では、腰丈ほどの笹薮に入ったのですが、ここはダニの巣窟で、車に戻ってからお互いの体を見てみると、友人には6匹、私には4匹のダニが貼り付いていました。げげ・・・・ 汗;;


 早めの発見でダニの餌食にならずに済んだことを、神様に感謝。笑