焼石岳と月山のベニヒカゲ

西日本では大雨の被害が深刻な様相を呈しているようです。
犠牲となられた方々のご冥福を心から願っております。


西日本の豪雨とは対照的に、関東から東北にかけては残暑が厳しい昨今です。
昨日は、山形・月山のベニヒカゲに会いに出かけました。
月山は、標高1,984m。
山麓をぐるりと取り囲むようにギフチョウが生息し、特に内陸側ではヒメギフとともに混生地を形成し、月山沢では6月に入ってからもギフチョウが発生するという、蝶愛好家にとってはギフチョウで知られた山です。
月山は、仙台から2時間もかからないのですが、なかなか出かける機会がなく、ここのベニヒカゲも長い間見たいと思いながら延ばし延ばししてきました。
今週の天気予報から、火曜日が最も安定的に晴れる様子なのを確かめて出かけることにしました。

少々古いですが、小暮翠氏の著書に拠れば、北海道のいわゆるキタベニヒカゲを除いて、本州のベニヒカゲは、全部で15亜種に分類されていたそうです。

Erebia niphonica
1.ssp.hayachineana 早池峰山
2.ssp.yakeishidakeana 焼石岳
3.ssp.shirahatai 鳥海山
4.ssp.gassana 月山
5.ssp.asahidakeana 朝日岳(山形)
6.ssp.shibutsuana 至仏山
7.ssp.mikuniana 三国山脈
8.ssp.niphonica 浅間山系(原名亜種)
9.ssp.togakushiana 戸隠山
10.ssp.okadai 北アルプス山系
11.ssp.nyukasana 入笠山(長野)
12.ssp.sugitanii 中央アルプス山系
13.ssp.amarisana 甘利山(山梨)
14.ssp.tateyamana 立山山系
15.ssp.yoshisakana 白山

この15の亜種のうち、12までが3人の「研究」者によって命名記載されたのだそうですが、それらの個体変異を並べてみると、結局はすべての亜種が連続してしまうということで、今は焼石岳を除いて同一亜種内の変異として扱われているのだとか。
で、その唯一の例外が焼石岳のベニヒカゲで、私はとりたてて別亜種にするほどのものか、とは思うものの、藤岡氏の大図鑑に拠れば、
①ジャノメの紋様が外側にずれる
②前翅の紅色が特に大きい
③後翅の紅色の紋列が明瞭に出る

などの点で他の産地のベニヒカゲとは明らかに変異が断絶しているのだそうです。

焼石岳のベニヒカゲは2年前に撮影しました。
このブログ開始以前の画像なので、記録の意味も含めて本州産で唯一別亜種に分類できるというこの個体群の写真を載せておきます。
8月の下旬に出かけたので、すっかりボロのベニヒカゲばかりでした。 💦

イメージ 1
2012/08/21 岩手県焼石岳 姥石平
イメージ 2
2012/08/21 岩手県焼石岳 姥石平
イメージ 3
2012/08/21 岩手県焼石岳 姥石平



以下は、昨日撮影した月山のベニヒカゲ
かつてはssp.gassanaとされていた個体群ですが、斑紋の傾向としては、鳥海山朝日岳(福島・山形県境)とほぼ同一の変異個体群とみなされています。
イメージ 4
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
食草のヒメカンスゲは標高1400mほどから上部に広く生育していますが、不思議なことに、ベニヒカゲはこの画像の上部(岩礫地帯より上の草地)にしか生息していません。
かつては、下の草地にも広く生息していたそうですが、今はまったくその姿を見ることはできません。
温暖化と関連があるのでしょうか。

イメージ 5
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
小雨交じりのガスの中を飛ぶベニヒカゲ
霧がかかって気温が低下するなかでも、少しでも明るくなると飛び出す

イメージ 6
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
ヒメカンスゲの群落に埋もれるようにして咲くミヤマセンキュウの白い花に吸蜜に訪れる

イメージ 8

イメージ 7
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
上 ♂
下 ♀
翅裏の斑紋が同一産地でこれほど異なる。


以下はベニヒカゲの飛翔画像
いろいろなシチュエーションで撮ることができました。

イメージ 9
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
イワゼキショウの白花に吸蜜後、つぎの花へと飛び移る

イメージ 10
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 ♂
♀を見つけて追いかけようと飛び立ったところ

イメージ 11
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
アキノキリンソウで吸蜜しているところへ、アブが飛んできた
驚いて飛び立とうとする♂

イメージ 14
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 
飛び立った♂

イメージ 18
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 
裏側から


イメージ 12
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 
アップで撮ろうとしたが、頭部のピントは外れてしまった 汗;

イメージ 13
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
羽化したばかりの♀を♂が目ざとく見つけてそばに寄る
上 ♀   下 ♂

イメージ 15
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳
この2頭はしばらくもつれ合って、深い藪の中に入り込んでしまった



次の2枚はMACROで丁寧に撮ってみましたが
頭部・胴体が真っ黒なベニヒカゲの場合は、イマイチ精細感がでない・・・・💦

イメージ 16
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 ♀

イメージ 17
2014/08/19 山形・月山 姥沢岳 上の写真と同じ♀