今日の一枚 テングチョウ

 むかし、秋田で生活していた頃、テングチョウは私にとっては未知の蝶でした。
同じエノキに付くゴマダラチョウオオムラサキは沢山居るのですが、このテングの姿にはついぞお目にかかったことがありませんでした。
 その鼻先が尖ったテングという変わった名前から、実物をこの目で確かめてみたいと思いながら、やっと生きたテングチョウに出会ったのは、仙台に赴任してきてからです。
 仙台では春先に、青葉山などで越冬明けのテングチョウを簡単に見つけることができ、積雪の有無がテングチョウの多寡を左右しているのかと思案したものです。
 でも、同じ多雪地帯の会津などでは、このテングは沢山いて、必ずしも雪の問題でもなさそうです。
 いまちょうど、羽化の最盛期で、この時期はたまにテングチョウの姿を見かけますが、数日もしないうちに忽然と姿が見えなくなり、晩秋になって再び冬日に日向ぼっこをする様子を目にするようになります。
 普遍的に分布する蝶の割には、羽化後の生態はあまり解明されておらず、この蝶の夏の間の隠密ぶりは徹底しています。

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テングチョウ 2015/06/14  仙台市青葉区

スミナガシを撮影しているときに、なにか黒っぽくて小さいトビケラか蛾のようなものが細枝に止まった。
ちょっと目には、ゴミがぶら下がっているかのようにも見える。
よく見ると、この時期目にすることは珍しい、テングチョウだった。
彼らは、こうした忍者のような目立たない姿で夏の間を過ごしているのだろうか。