執念のフジミドリ

 昨年、仙台にいるゼフィルス全種の撮影をしようと考えたのはいいけれど、とりわけ撮影困難と言われるフジミドリシジミを写すのには、文字通り四苦八苦しました。
 高いブナの梢をちらちらと飛ぶ豆粒のようなフジミドリを見て、ほとんど不可能ではないかとさえ思ったものです。
 しかし、意外にもフジミドリシジミの習性がわかるにつれ、それほど難しい蝶ではないと思うようになりました。
 良く晴れた日の午前中に、この蝶はしばしば下に降りてくるようです。
 撮影の可否は、降りてくるポイントを探し当てるかどうかにかかっています。

 去年、その落下ポイントを知ったときは、時期的にはすでにほとんどの個体が古びていて、とりわけ♂はハチャメチャに破れ古したものばかりでした。
 今年こそは、フジの発生初期にそのポイントで待ち構えて、新鮮な♂を撮ってやろうと、発生のタイミングをいまかいまかと待ち構えていました。
 
 6月10日ごろには、そのポイントに出かけていましたが、今年のゼフの発生は昨年に比べて1週間か10日ほど遅れました。
 20日を過ぎた6月下旬になって、やっと狙い通りに新鮮な♂が現れました。
 思っていた以上に青色が美しく、ルリシジミにほんの少し緑色を混ぜたような美しい輝きを明滅させながら、はらはらと舞い落ちてくるような感じで梢から下に降りてきました。

 木漏れ日があたった下草の上にとまったのは、羽化してそれほど日時が経っていないような綺麗な♂でした。
 
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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
20M以上もの高さがあるブナの梢から、吸水にきた♂
直接地面に降りてくることはなく、一旦近くの下草などに止まることが多い。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
翅を半開きにした。
美しい水青緑色が覗く。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
脅さないようにそっと近づいてアップショット。
とても新鮮なのに、惜しいことにわずかに前翅に小さな傷がみえた。
羽化してまだ翅が柔らかいうちに、枝や葉などに接触して付いたものか。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
半開した翅を一旦閉じた後、そのあと今度は完全に開いた。
他のミドリシジミ類とは全く違う、清新な色合いとその輝き。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
一旦舞い降りた下草の葉から、地面に降りてきた。
地上は見た目では乾いているが、口吻を伸ばして地面を探るようにして歩き回る。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
樹々の間から漏れる日を浴びて、ゆっくりと翅を広げた。
まぶしいほどの輝きだ。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/21 仙台市青葉区
フジミドリシジミのこういう写真が撮りたかったんです。
ああ、日参した甲斐がありました。涙;

その後、一週間ほど曇天や雨天が連続し、フジミドリばかりではなくほかのゼフも見ることができない日が続きました。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/27 仙台市青葉区
一週間後に現れたフジは、もう飛び古した♂だった。
尾状突起は、鳥につつかれたものか、ボロボロに欠けて、鱗粉の擦れも激しいようだ。
これは特に早く出てきた個体なのかも知れません。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/27 仙台市青葉区
さらにもう一頭の♂が降りてきた。
こちらの擦れ方は、最初の♂ほどではないようです。

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フジミドリシジミ♂ 2016/06/27 仙台市青葉区
止まった姿勢で翅を開くことなく、落ち着かないように歩き回って、すぐに飛び去ってしまった。
もぞもぞと飛びそうな気配を感じたので、とっさにシャッターを押しました・・・が
頭部はピンボケ、全体はブレブレですが、翅の美しさだけはわかるかと。汗;


7月に入って、ほかのミドリシジミ類が出始めたころ、私が密かに蝶写真の師と仰いでいる東京在住のNさんと一緒に撮影にでかけました。

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/02 仙台市青葉区
この日は、♂と♀が各一頭ずつ姿を見せてくれましたが、♂の撮影はカメラの設定ミスでこんな写真しか撮れませんでした。

 ♀はカメラを構えたところで、飛んで行ってしまい、証拠画像さえとることができませんでした。
 Nさんは、やや遠い距離ながら、最初の♂をしっかり撮影されたようです。




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フジミドリシジミ♀ 2016/07/10 仙台市青葉区
そして、久しぶりに晴れ上がったこの日、はじめに♀が現れた。
完全無欠の♀だったが、あいにく翅裏を写す間もなく飛び去った。

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フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区
二日後、絶好のお天気模様に誘われて、また♀が現れた。

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フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区
藪草のなかをちらちらと零れるように止まっては飛び、飛んでは止まるを繰り返しながら、次第に下の渓流まで降りていく。

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フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区
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フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区
日光の届かない暗い藪の中を、ちらちらと飛ぶ姿が可愛らしい。

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フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区イメージ 18フジミドリシジミ♀ 2016/07/12 仙台市青葉区
これはまた別の♀。
お天気のせいか、次から次へとフジミドリが現れる。


比較的綺麗な♀に続いて、ややスレ気味の♂も何頭か降りてきた。

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区
優しく飛ぶ♀に比べて、追っかけの♂は擦れ方も激しい。

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区
翅裏は擦れていても、翅表の美しさはお見事。

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区
別のオスもやってきた。

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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区
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フジミドリシジミ♂ 2016/07/12 仙台市青葉区
連写で撮ったボケ写真の山の中で、2枚だけピントが合っているものがありました。

今年は、去年に比べて綺麗なフジミドリの淡青緑色を写すことができました。
6月から始まって一か月。
フジのシーズンはそろそろ終わりに近づいているようです。