30年前の記憶
1989年といえば、今年でちょうど30年前のことになります。
私が40歳の時、インドに出かけたのが私の最初の海外旅行でした。
私が40歳の時、インドに出かけたのが私の最初の海外旅行でした。
初めての外国であったし、もちろん有名な数か所の観光地(アーグラー、バラナシ、サールナートなど)に立ち寄りましたが、本来の目的は別のところにありました。
ニューデリーからマドラスに飛び、マドラスから陸路を半日以上かけて、リシ・バレーという南インド奥地の美しい丘陵地帯を訪ねたのです。そこは風光明媚ではありましたが、普通の観光ルートからは遠く離れていて、間違っても外国人などが尋ねるような場所ではなさそうでした。
その乾燥した、しかし背後の山並みから流れる水脈にそって、緑がベルト状に伸びる谷には、時には野生のゾウの群れが水浴びに訪れるという滝があり、周囲には椰子やバンヤン樹が茂り、色とりどりのインコや小動物の影がみられる丘陵地の風景は素晴らく、日本とは違った乾燥した大地と対照をなす緑と生き物たちの美しさは、当時屈託を抱えながら旅をする私の心に深くしみました。
日中の気温は40度近くになるのに、夜間は15度以下まで下がり、早朝などは半袖シャツでは寒いぐらいの温度差があったように思います。
日中の気温は40度近くになるのに、夜間は15度以下まで下がり、早朝などは半袖シャツでは寒いぐらいの温度差があったように思います。
そのなだらかな丘陵のほとんどは緑濃い谷筋を除けば、ごつごつとした岩だらけの荒涼とした平原が続いていて、そのあたり一帯には美しい南インド特有のアゲハチョウが飛んでいました。
南インドへの私の旅の目的は、蝶ではありませんでしたが、当時も若かりし頃の蝶への関心は持続していたので、その時持参していたカメラ(もちろんフィルムカメラ)で、初めて目にする外国の蝶を撮ったのが、私が蝶をカメラで撮った最初の経験となりました。
今にして思えば、この時の撮影の喜びがその後の蝶写真の楽しみにつながっているようです。
今にして思えば、この時の撮影の喜びがその後の蝶写真の楽しみにつながっているようです。
ふと、当時のことを振り返る必要があり、書庫に眠っていた古いアルバムを開いてみると、あの時撮った蝶の写真が貼り付けてありました。思いついて、この写真をスキャンして、デジタル化してみました。
シャッターを押しさえすれば写る超簡便カメラだったので、今のスマホ付属のカメラにさえ劣る画質ですが、私にはかけがえのない思い出の記録です。
早朝6時。散歩に出かけると、朝日を浴びて、盛んに小刻みに両翅を震わせている♀を見つけました。
恐らく、羽ばたきによって体を温めて、飛ぶ準備をしていたものでしょう。
10分ほど羽ばたきをしたあと、ふわりと飛び立ち、この黄色い花に止まりました。
この花の上でしばらく羽ばたきを小刻みに繰り返して、
やがて元気に高く青空に舞い上がっていきました。
30年前のプリントなので、だいぶ色が変色していると思いますが、それでもジャコウアゲハ類特有の体の鮮やかな赤さがしのばれます。